プロ野球亭日乗BACK NUMBER
今年の巨人に“穴”は無い?
主力離脱を補完する選手たち。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySPORTS NIPPON
posted2010/06/15 10:30
6月9日のオリックス戦では、先発の黄に続いて星野真澄、山口鉄也両投手が登板し、史上初の育成出身3投手によるリレーが実現した
強いのか、弱いのか……。
今年の巨人の試合を観ていると、決して昨シーズンのような安定的な強さを感じない。
理由は明白だ。
投手陣、特に先発投手の安定感がないからだ。
6月に入ってロッテ戦2試合で19失点して連敗。その後の日本ハム戦も6失点、5失点と苦しい展開だったが、この2試合は打線の奮起で逆転勝ちを収めた。
「これだけ先発投手が打たれると、野球の組み立てができなくなる。先発にはやっぱり5回で3、4点。そういう計算でマウンドに送っているんだけどね……」
原辰徳監督の表情も曇りがちだ。
昨年はグライシンガーにゴンザレスという両輪に内海、東野と年間を通じて安定したピッチングをみせた投手が4人もいた。しかし、今季は東野が一本立ちをしたものの、内海が開幕1カ月で故障から約2週間の戦線離脱。エース格にと期待したゴンザレスも不振のどん底にあえいでいる。右ひじの手術をしたグライシンガーの代役と期待されたオビスポも伸び悩んでいる。
構想とはかけ離れた戦力での戦いを強いられているわけだ。
ゴンザレスが抜けた穴を埋めた育成枠出身の黄志龍。
それでもよく首位をキープできていますね? そう問いかけると原監督の瞳がきらりと光った。
「そういうことを想定してチームを作ってきたからね。投手だけではなくて、野手でもそう。主力が欠けたら穴を一人でまるまるは埋めることはできないかもしれないけど、適材適所で使っていけば何人かの選手で、その穴はそん色なく埋めていくことはできる。だから多少のアクシデントがあっても全体の力はそうは落とすことはない」
主軸の不振、欠場を誰か一人の選手に埋めさせるのではなく、選手層の厚さでカバーする。
その象徴的な試合が6月9日のオリックス戦だった。
「また新たに頼もしい戦力が加わった」
先発マウンドに送った黄志龍(ファン・ツーロン)投手のことだ。
黄は台湾国立体育学院(大学)出身の21歳の右腕。巨人は昨オフに育成枠で契約。今季はファームで主に先発で7試合投げて防御率1.54という成績を買われ、6月3日に支配下契約したばかりだった。
ゴンザレスが息子のケガで帰国。その代役として黄を先発マウンドに送り出したのが、このオリックス戦だった。