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アロンソの真の敵は天才デザイナー!?
生ける伝説A・ニューウェイの革新性。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2012/11/02 10:30
韓国GPでトップを独占して表彰台に立つレッドブルチームとアロンソ。写真の一番左側がニューウェイ。
ウイリアムズ、マクラーレン時代に匹敵する栄光再び。
ニューウェイは3年間かけて、レッドブルのエンジニアリングチームを再構築。その努力が実を結んだのが、空力に関するレギュレーションが大きく改訂された'09年のことだった。
レギュレーションでフロントウイングの幅が広げられたこの年のマシンは、どのチームもやや不格好な体を成していた。しかし、ニューウェイが発表したRB5はそれまでのF1マシンよりも美しく見えるほど洗練されていた。
その後もニューウェイはリアサスペンションに「プルロッド」を採用したり、排気の力を利用してダウンフォースを高める「ブロウディフューザーシステム」を導入したり、独創的な開発でライバルたちをリード。
2010年からの2連覇は、ウイリアムズ時代、マクラーレン時代の栄光にも負けないほど光り輝いている。
今季の序盤戦を棒に振ってまでもこだわった、独自技術の開発。
そのニューウェイが今年、3連覇に挑もうとしている。しかし、シーズン当初、レッドブルはライバルたちの後塵を拝していた。ブロウディフューザーを制限させるため、今年からFIAが変更したレギュレーションへの対応で後手を踏んだからだった。
今年この分野でリードしたのがマクラーレンとザウバーだった。序盤戦でその事実が確認されると、ライバルチームはこぞって彼らのアイディアをコピーした。スペインGPでマクラーレン型を投入したフェラーリはアロンソの力にも助けられて、その後チャンピオンシップをリード。一方レッドブルは一時、ザウバー型をトライするが、うまく行かずに旧型システムに戻すなど、ヨーロッパラウンドに入っても精彩を欠くレースが少なくなかった。
しかし、この停滞は決して策がなかったからではなく、時間をかけて開発を行っていたからだった。この時期、ニューウェイは序盤戦で結果が出なかったものの、マクラーレン型でもなければ、ザウバー型でもない、自分たちで開発したアイディアのブロウディフューザーシステムを再開発していたのである。