欧州サムライ戦記BACK NUMBER
ニュルンベルクの低迷をチャンスに!
突破力を磨いた清武が代表で輝く日。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2012/10/25 10:30
清武は孤軍奮闘するも、後半19分で途中交代。ホームで迎えたアウクスブルクとの試合は0-0の引き分けに終わったが、サポーターからは敗戦後のような激しいブーイングが起こった。
清武のプレーに共鳴する選手が一人でも出てくれば……。
「このチームでは、いい形でとか、前向いてボールをもらってとか思っていても、なかなかできない。パスサッカーも諦めてはいないけど、パスコースもほとんどないので現実的には難しい。みんな、やたら足元にボールを欲しがって、しかもやりたいようにやっているんでね」
それでも個々の技術が高ければ、まだ可能性はある。清武のプレーを見て、感じ、共鳴してくれる選手が一人でも出てくれば必ず良くなるという期待が持てる。
しかし、アウクスブルク戦はもちろん、過去のどの試合を見ても、共鳴しようという意識は見えてこない。むしろ、ベクトルはバラバラだ。さらに、プロとしてありえないパスミス、凡ミスを繰り返している。
こういうチーム状態では、清武一人の力でどうこうするという限界を越えている。メッシが一人いても他選手のレベルが至らなければ試合には勝てないのと同じだ。ましてや清武は、助っ人FWのようにボールを持ちながら一人、二人を抜いてゴールを決めるタイプでもない。それでも、黙々と一生懸命にプレーしている姿を見るのは、ちょっと痛々しいほどだ。
「個人のスキルを伸ばしていきたい」と語る2つの理由。
ロンドン五輪の時は、苦しくても楽しそうにサッカーをしていた。それは、チームメイトと共通意識の下、やろうとするサッカーが全員で出来ていたからだ。
だが、ニュルンベルクでは、仲間と同じ意識やサッカー観を共有できず、極端に言えば単独でサッカーをせざるをえない。そこで清武は、ひとつの結論に達したという。
「このチームは、蹴るサッカーだというのはもう分かっているので、今は個人でボールを持ったらドリブルを仕掛けるしかないと思っています。それしか選択肢がないんですよ。そうして、ドリブルをはじめ個人のスキルを研けば、代表ではパスサッカーができるし、その中でも生かせるじゃないですか。だから、このチームでは、勝ちにいくのはもちろんですけど、プレーでは個人のスキルを伸ばしていきたいと思っています」
清武が、そう考えたのは、日本代表の欧州遠征で、ブラジルに0-4で敗れた試合が大きく影響している。その試合では、フランス戦では出来なかったボールを回すことも前に運ぶことも出来た。だが、容易にフィニッシュすることはできなかった。真っ向勝負を挑んだが跳ね返されたのだ。試合後、清武は、「ブラジルは、個のレベルがまったく違った。そこを上げていかないと世界でゴールを奪えない」と、語っていた。