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最悪のイタリアGPも「パーフェクト」。
アロンソが見せる“3度目”への執念。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2012/09/16 08:01
イタリアGP終了後、表彰台に登ったアロンソは眼下に集うティフォシを自ら撮影。“ご機嫌”の理由は、トラブル続きの週末にあった。
ガレージの停電で走行データを確認できない状態に。
ところが、トラブルはその1回目のアタックに出た直後に発生した。リアサスペンションの一部であるアンチロールバーが機能しなくなるというアクシデントに遭遇するのである。アタックせずにピットインしたアロンソだったが、予選中に交換できる部品ではなかったため、チームはそのまま再びアロンソをコースインさせる。予選10番手は、手負いのマシンでアタックした結果だった。
フェラーリは予選後に故障した部品をFIA(国際自動車連盟)の許可を得て交換し、日曜日の決勝レースに臨むことができた。しかし、不運はまだ続いた。レースがスタートした直後に、フェラーリのガレージで停電が発生するのである。停電自体は、ガソリンで走行しているF1マシンには何の関係もない。しかし、現在のF1はエンジン、ギアボックス、タイヤ、ブレーキなど、ありとあらゆる部分にセンサーが埋め込まれていて、それらのデータをテレメトリーでピットへ送信してエンジニアたちが注視し、状況に合わせて最適な状態でマシンを走らせるアドバイスをドライバーに送っている。
ところがガレージが停電になって、モニターの画面がシャットダウンされたため、フェラーリのエンジニアたちはそれらのデータを見ることができない状態に陥ったのである。幸い、停電はガレージ内の電気機器に限られ、テレメトリーそのものには影響がなかったため、フェラーリはテレメトリーの情報を受け取っているファクトリーに電話で連絡して、アロンソの走行データを確認することができた。
ベッテルのバトルでマシン底部に深刻なダメージを負う。
チームが機転を利かせたおかげで、ガレージの停電は大事には至ることなく、10番手からスタートしたアロンソはレース中盤に6番手まで浮上。しかし、ここで再びアロンソに試練が訪れる。それはセバスチャン・ベッテルとのバトルでコースオフを余儀なくされ、マシン底部にダメージを負ったのである。
その後、アロンソは2番手までポジションをアップさせるが、レース中に復活したガレージ内の電源によってテレメトリーを確認すると、マシン底部のダメージは想像していたよりも深刻だったため、チームはアロンソに「縁石を乗り越えないように走行してほしい」と指示。そのため、後方から猛追してきたペレスとの勝負を避け、2位(18点)から3位(15点)に後退した。