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最悪のイタリアGPも「パーフェクト」。
アロンソが見せる“3度目”への執念。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2012/09/16 08:01
イタリアGP終了後、表彰台に登ったアロンソは眼下に集うティフォシを自ら撮影。“ご機嫌”の理由は、トラブル続きの週末にあった。
ポール・トゥ・ウィンを飾ったルイス・ハミルトンから20秒後、格下と思われていたザウバーのセルジオ・ペレスの後塵を拝しながらチェッカーフラッグを受けたフェルナンド・アロンソ。イタリアGPはフェラーリの地元。しかも、タイトル争いのリーダーとして凱旋したにもかかわらず、ティフォシ(熱狂的なフェラーリ・ファン)の前での3位という結果は、プライド高き元王者としては負けにも等しい内容にも見えた。
しかし、表彰式に姿を現したアロンソはセレモニーの後、テレビクルーからカメラを借りると、眼下に広がるティフォシたちを自ら撮影するという、いままで見せたことがないパフォーマンスを披露した。
「パーフェクトな一日だったからね。まるでハッピーエンドの映画でも見ているかのようだった」
3位だったにもかかわらず、アロンソがまるで勝者のように喜んだのには訳があった。それはイタリアGPでアロンソは、トラブルに次ぐトラブルを抱え、まともに戦うことができない状態が続いていたからである。
金曜日のフリー走行がトラブルの始まりだった……。
最初のトラブルは走り始めとなった金曜日のフリー走行1回目に襲ってきた。セッション終了間際にエンジンに不具合が発生。コース脇にマシンを止めて、セッションを終了させた。
エンジンを交換して、臨んだ2回目のフリー走行ではブレーキが不調となる。ピットで点検後、再びコースインすると、今度はギアボックスのトラブルに見舞われ、スローダウンしながらピットに帰還。トップチームが軒並み30周以上を周回する中、アロンソの周回数は17周にとどまった。
「トラブルに見舞われるのが金曜で良かった」と、この時点ではまだアロンソにも余裕があった。というのも、今年のフェラーリはレースで抜群の信頼性を誇り、イタリアGPの1週間前に行われたベルギーGPでロメイン・グロージャン(ロータス)に追突されてリタイアした以外は、すべて完走(しかも入賞)していたからだった。
フェラーリのトラブルは2日目以降も続いた。土曜日の公式予選のQ1とQ2でトップタイムを叩き出して、Q3へ進出したアロンソ。この時点でアロンソは「1分23秒9」を自らの設定タイムとし、ポールポジションを真剣に狙う覚悟でいた。