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なでしこリーグで五輪決勝を再現!?
女子サッカーの未来に必要な事とは。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byNoriko Hayakusa/JMPA
posted2012/08/30 10:32
銀メダル獲得後、記者会見で佐々木則夫監督は「個の力を上げるという意味では、もっとクラブや選手本人たちと吟味して個の質を上げる方策をとる必要があると感じています」とコメントした。
リーグ全体の発展のためにはクラブへの支援が不可欠。
もっともこの『条件面』の壁を乗り越えるのが、相当に難しい。
なでしこジャパンの女子W杯制覇後、なでしこリーグの多くのクラブが新たにスポンサーを獲得しているとはいえ、大口の契約を結べたところは稀だ。もともと資金面でも別格の存在だったINAC神戸、そして今年1月から吉本興業が資本参加している大阪高槻を別にすれば、大部分のクラブにとって外国の一流選手を獲得する余裕などないのが実情だ。
が、アメリカ代表の多くの選手の所属先が宙に浮いてしまっていたり、日本の女子サッカーへの評価と注目が世界中で高まっているこのタイミングを逃してしまうのは、あまりに惜しい。
経済力のあるチームだけがその恩恵を受けられるのではなく、全国各地のなでしこリーグ選手が日常的にワールドクラスのプレーと接する環境を作れないものか。
それには、女子W杯制覇の影響で日本協会やなでしこリーグも財政的に潤っているのだから、協会やリーグの主導で各チームそれぞれが優れた外国人選手を受け入れられる制度を整える、というのもひとつの手かもしれない。
純然たるプロリーグであれば各クラブのチーム強化は自助努力で行うべきものであり、上部組織のそのような介入は護送船団方式だと非難されるだろう。だが今のなでしこリーグは、実質的なプロクラブ、プロ選手とアマチュア選手の混成クラブ、そして完全なアマクラブが同居している。その状態で自由競争を行っても、リーグ全体の健全な発展は望めないのは明らかだ。
具体的にどんな方法で各クラブの外国人選手獲得をサポートするのかについては様々な方法があるだろうが、協会やリーグには『ここが攻め時』と、大胆かつ持続可能な施策を期待したい。
女子サッカーを一時的なブームで終わらせないために。
持続可能、とあえて記したのには理由がある。
かつてのバブル期、当時はLリーグという愛称だった日本女子サッカーリーグでは、企業のサポートを受けたプロチームがそれぞれ各国の一流選手と契約を結び、“世界最高の女子サッカーリーグ”の称号を得ていた。しかしバブル崩壊後にスポンサー企業が次々に手を引いた結果、外国人選手を抱えられなくなったばかりか、組織そのものが消滅してしまうクラブが続出した。そして日本の女子サッカーは、長い冬の時代に突入していったのである。
なでしこリーグを国際色豊かな舞台に、という今回の提案は、競技振興のためのひとつのアイディアに過ぎない。ただ昨年来の追い風をうまく捉え、女子サッカーを一時的なブームではなく永続的なメジャー競技にするためにはまさに今、協会やリーグがどのような手を打つかにかかっていることだけは、間違いないのではないか。