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「パワーとスピードにびっくりした」
ヤングなでしこ、独との準決勝に散る。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byToshiya Kondo
posted2012/09/05 11:40
猶本光(写真中央)は試合後、「(ドイツのパワーとスピードを体験して)自分ももっとうまくなりたいと思えて逆に良かった。いつかドイツに行ってみたい」と、将来の移籍を匂わしつつ、不屈の意志を示した。
「今までに体感したことのないパワーとスピードだった。びっくりした」
猶本光(浦和レッズレディース)は感服せざるを得ないというような口調で言った。
「想像以上にフィジカルが強かった。2、3人でボールを取りに来ていたので、1人では無理だった」と振り返ったのは田中陽子(INAC神戸)だ。
ここまでの4試合では中盤で抜群の存在感を見せ、自在なプレーでチャンスを作ってきた2人が、初めて動きを封じられ、ときにボールを奪われもした。
それほどに、この夜の相手は強かった。
前半19分までに立て続けの3失点……試合の大勢は決した。
U-20女子W杯準決勝が東京・国立競技場で行われ、U-20女子日本代表“ヤングなでしこ”が前回覇者のU-20女子ドイツ代表に0-3で敗れた。
日本は前半19分までに立て続けに3失点を喫し、そこでほぼ大勢が決してしまった。
攻撃面でも自分たちの良さをまったく出させてもらえなかった前半、日本のシュート数はわずか2本。「まずは1点返そう」と互いを励まし合い、いくつかの修正を施して臨んだ後半はチャンスを作れるようになったが、それでも枠内シュートはわずか1本。
リズムに乗れない試合になったときの怖さをあらためて思い知るような一戦だった。
セットプレーでの守備は、今大会を通じて日本の弱点だった。
何より痛かったのは、試合開始の笛が鳴ってからわずか57秒後の失点だった。
日本はハーフウェーライン付近で猶本が3人に囲まれてボールを奪われると、するすると前線へ運ばれ、最終ラインの裏へスルーパスを出されてしまう。これをMFロイポルツに決められ、いきなり先制ゴールを献上してしまった。
すると、ヤングなでしこDF陣は、このワンプレーで浮き足立ってしまう。前半13分にはロングボールへの対処を誤り、マロジャンにGK池田咲紀子の頭上を越えるループシュートを決められて0-2。さらにその6分後の前半19分には、セットプレーからロッツェンに頭で決められ0-3とリードを広げられてしまった。
セットプレーでの守備は、失点するしないにかかわらず、今大会を通じて日本の弱点となっている要素だ。ドイツに3点目が入ったときも、要注意選手として挙げていたFWをノーマークにしてしまっていた。