予想と違って、外、外、外の勝負!?

　1回表、先頭打者として1番天久翔斗をセカンドゴロに打ち取って最高の立ち上がりを見せると、2番・関口隆祥を空振り三振にとった。

　そこで、まずは3番・田村を迎える。

　初球こそ、インコースを突くストレート（ストライク）だったが、2球目は外へのカーブでツーナッシング。3球目は外へ逃げるカットボールで見逃し三振に斬った。

　そして、2回表に訪れた北條との最初の対決。

　初球、150キロのストレートでストライクを取ると、2球目も要求はアウトコース。最後はアウトコースのカットボールで見逃し三振。

　内、内、内を意識させての外ではなく、外、外、外の勝負だった。

　それもストレートとカットボールを使い分けての圧巻のリードだった。

「今日の藤浪さんは今まで受けてきた中で一番良かったと思います」

　森は言う。

「インコースも考えたんですけど、外のストライクゾーンが広かったというのもありましたし、上手く使おうと思いました。変化球には田村さんも北條さんもあってなかったので、アウトコース中心に攻めていきました」

　ふたりの第2打席も、アウトコース中心のリードを継続した。

　田村に対しては外のカットボールとスライダーで追い込んでツーナッシング。ボール球のストレートを見せた後、外のスライダーで空振りの三振。

　北條には150キロのストレートでストライクを取ると、2球目は外のカットボール（判定はボール）。続けざまに外のカットボールで追い込み、最後も外のカットボール。これを北條がバットに当てるが、中飛に抑えた。

　見事な配球だった。そこへ投げ切った藤浪もまた素晴らしかった。

　森が再び、振り返る。

「今日の藤浪さんは今まで受けてきた中で一番良かったと思います。ストレートも全ての変化球も。田村さんを三振に取った時は、自分のことのように嬉しかった。『やったったぞ』くらいの気持ちでしたね」

　さらに、森のリードが素晴らしかったのは、アウトコース一辺倒にならなかったことだ。第3打席では少し、配球を変えてきていた。

【次ページ】　試合の流れを見て配球を変えていった、2年生捕手の森。