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<ナンバーW杯傑作選/'10年1月掲載> 名将ヒディンクに学べ 「オランダの倒し方、教えます」
text by
サイモン・クーパーSimon Kuper
photograph byPics United
posted2010/06/03 10:30
だが諦めるのは早すぎる。昨夏のユーロでロシアは“巨人”を倒したからだ。
守備陣が抱える不安からFWの意外な盲点。そして攻略法にいたるまで。
日本が大番狂わせを演じるための「正解」を、名将ヒディンクから学べ。
来夏のW杯、日本はオランダ、カメルーン、デンマークと同組になった。ブックメーカーのオッズからもわかるように、日本にとってはお世辞にも楽な組み合わせではない。すでに巷ではオランダの1位通過は確定、どこが2位に滑り込むかが議論されている。
だがサッカーは何が起きるかわからないスポーツでもある。日本がオランダに一泡吹かせる可能性もゼロではない。そこで参考になるのがフース・ヒディンクの例だ。
ユーロ'08でロシアを率いたヒディンクは、それまでの2年間で無敗だったオランダに土をつけた。日本も彼から学べば、6月19日のダーバンで“オラニエ”を破ることができるかもしれない。ではいまから、日本が付けこむべきオランダの弱点を挙げてみよう。
「GKの不安」を煽れ。サイド攻撃を多用せよ。
1995年から2008年まで、オランダは130もの国際試合でエドウィン・ファンデルサールを起用してきた。彼が世界有数の名キーパーであることは間違いない。たとえばヒディンクは、ファンデルサールが不在であったなら、オランダはユーロ'08のフランス戦で負けていたはずだと考えている。
ファンデルサールは現在マンチェスター・ユナイテッドでプレーをつづけているが、代表からは'08年をもって引退。後継者のマールテン・ステケレンブルフは同じくアヤックス出身で、カルビン派の牧師を思わせる陰気で面長の顔まで受け継いでいる。
しかしステケレンブルフはファンデルサールではない。オランダの名選手100人を本にまとめているヘンク・スパーンは語る。
「彼はゴールライン上ではいい動きをするが、ハイボールには非常に弱いしライン上に残りすぎるきらいがある。そもそもキャリアをスタートさせたころから、コーナーキックやフリーキックに対する弱さがあった」
さらにステケレンブルフの旗色を悪くしているのが、ファンデルサールをいま一度W杯に担ぎ出そうという動きがあることだ。こんな宙ぶらりんの状態が、ステケレンブルフの自信につながるわけがない。日本がもし普段以上にサイド攻撃を多用してクロスやコーナーキックを放り込めば――それはとりもなおさず、中盤での組み立てを避けることにつながるのだが――ステケレンブルフから「幸運のおすそ分け」があるかもしれない。