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<ナンバーW杯傑作選/'10年1月掲載> 名将ヒディンクに学べ 「オランダの倒し方、教えます」
text by
サイモン・クーパーSimon Kuper
photograph byPics United
posted2010/06/03 10:30
左サイドバックのファンブロンクホルストを突け。
ヒディンクは同じチームに違った結果をもたらすことができる存在だが、もうひとり名監督を挙げるならジョゼ・モウリーニョ。
'05年、モウリーニョ率いる当時のチェルシーは、チャンピオンズリーグでジオ・ファンブロンクホルストが在籍していたバルセロナと対戦した。アウェーのファーストレグを2-1で落としていたモウリーニョは、4人のアタッカーを投入してほとんどのボールを右サイドに集めた。元MFのジオはボールの扱いがうまいが、タックルはできないことを看破していたからである。
チェルシーの選手は早い時間帯に3度ジオを抜き去り、そのうちの2度はクロスからゴールをあげてチームに勝利をもたらした。日本はチェルシーのようにジオを攻め、右サイドからクロスを上げてステケレンブルフを攻めるべきだろう。
近年のW杯ではスピードの重要性が増しているが、ジオは来る2月で35歳を迎える。たとえ主将ではあってもジオを代表からはずす潮時ではないのか。この手の声はオランダ国内でも上がっているが、監督のベルト・ファンマルバイクは保守的な性格の持ち主で、有効な策をとりそうにもない。
不器用なセンターバックにボールを持たせろ。
ユーロ'08でオランダと対戦したとき、ヒディンクはオランダ代表の中で最もパス出しが下手な右SB、ハリド・ボラルーズにあえてボールを持たせた。あいにくW杯でボラルーズが先発することはなさそうだが、ヨリス・マタイセン、アンドレ・オーイェルのCBには、“ボラー”と似た不器用さがある。ヒディンクの方法論にしたがえば、日本の最善策は、このふたり以外に組み立てをやらせないことになる。結果として両CBは非生産的な横パスを蹴るしかなくなり、オランダの攻撃は必然的にスローダウンする。
特にオーイェルなどは今秋、故障つづきだった。オランダ国内では、ファンマルバイクがその彼に代えてチェルシーに所属する18歳、ジェフリー・ブルーマ(オランダで最も有名なテレビ解説者をして、“オランダのベッケンバウアー”と言わしめた)を入れるのではという観測もあったが、保守的なファンマルバイクのことなのでおそらくそれもないだろう。オーイェルがCBでプレーするなら、森本がスピードで勝負できる目も出てくる。