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ロンドン五輪の“運営”を採点する。
東京招致活動の参考にすべき点は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2012/08/14 11:40
閉会式では、再結成されたスパイスガールズに、ファットボーイ・スリム、ジョージ・マイケル、ケイト・モス、モンティ・パイソンのエリック・アイドル、クイーンのブライアン・メイらが登場し、ジョン・レノンのミュージック・ビデオが流された。
順調だったロンドンの交通対策は、東京の参考になる!?
●交通……Bプラス
ロンドンの街中は、非常に狭い。幹線道路は片側3車線あるが、市内の繁華街、混雑しているピカデリーサーカス近辺は大型トラックが片側1車線の狭い道に突っ込んでくる。
それでも「オリンピック専用道路」を設けた甲斐はあって、交通渋滞を経験したのはわずかに2度、最初はバスの故障に巻き込まれ、進むことができなくなった(こういうとき、運転手は融通が利かない。降ろしてもらわないと試合に間に合わないのに、上司に確認が取れない限り、絶対にドアを開けようとしなかった)。
また、関係者用のバスだけでなく、地下鉄が発達しているので、路線図を理解すれば市内の移動はかなり楽だった。数日経つと、縦横無尽に使いこなすことができたくらいだ。
この交通面ということでは、きっと東京はロンドンに劣ることはないと思う。
ボランティア・スタッフの優秀さだけは、東京も真似できないかも!?
●ボランティア……Aプラス
この分野に関しては、とにかく満点。
閉会式では、ロゲIOC会長のボランティアへの賛辞、ねぎらいが印象に残った。ロンドンのボランティアは自然体で(ボランティア同士が談笑している風景はとても感じがよかった)、なおかつプライドをもって役割をこなしていた。
北京五輪のボランティアは、英語ができる学生が目立った印象がある。選出には、かなり組織委員会の意図が働いていたと思う。
その点、ロンドンでは「ボランティアとはなにか?」ということを考えさせられた。地下鉄でたまたま一緒になったボランティアは、「たしか2年前に応募して、オリンピックの日がいつくるか、いつくるかと楽しみにしてたのよ」と話していた。
自発的に、大勢の人がオリンピックを成功させようと集まったのだ。
組織委員会はボランティアとは呼ばず、「ゲーム・メーカー」と呼ぶように心がけていた。参加性を高めようとしたのだろう。
東京で、これだけのボランティアが集まるだろうか? とちょっと不安になった。
施設やインフラは整備できても、ボランティアの質を高めることはむずかしい。なぜなら、あくまで人々の自発的な気持ちが頼りなのだから。
開催の支持率が低いということは、こうした人的資源の調達にも影響してくる。
今後、招致活動のなかで支持率をどうアップさせるのか、とても気になるところだ。