ロンドン五輪探検記BACK NUMBER
意外な「風」と「アップダウン」。
走って見つけた男子マラソンのツボ。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2012/08/12 12:40
ビッグベンなど、ロンドンの主要観光地を網羅したマラソンコース。次々と表情を変える街並みをバックに、藤原新、中本健太郎、山本亮ら日本男子勢はどのような走りを見せてくれるのだろうか。
「ちょっと走りにくいな」と感じるほどの風が……。
女子マラソンが終わった数日後に、「Qちゃん」こと高橋尚子さんとお話する機会があった。
そのときに「あれだけ気候の面で恵まれたオリンピックのマラソンレースはないんじゃないですか。雨もかえって呼吸が楽になるし、スタート時の気温も適温とされる14度で、それに風もありませんでしたから」というお話をうかがった。
「なるほど」と納得していたのだが、ひとつだけ疑問が浮かんだ。「風?」。ロンドンに来てから3週間、ほとんど風を意識したことがなかったのだ。
だが、これも実際に走ってみると気づかされた。12.875㎞の周回コースを別日に2回走っているのだが、その両日ともにテムズ川沿いでは「ちょっと走りにくいな」と感じる強さの風が吹いていたのだ。
風はテムズ川を東から西へ。つまりビッグベンのあたりから旧市街までが向かい風であり、タワーブリッジの手前で折り返してからは追い風だったのだ。
もちろん日によって風向きは違うだろうが、この風が勝負の行方や、女子で五輪新記録が出たことによって注目されるタイムを左右するひとつのファクトにもなりそうだ。
大会期間中はロンドン在住のカメラマンが「政府が何かしているんじゃないか?」と疑うくらい不思議と天候が安定しているが、女子マラソンの日だけは「ロンドンらしい」雨に降られた。男子はどうなるか?
ちなみに前日24時現在のBBCの予報では、スタートする午前11時(現地時間。日本時間では午後7時)の天気は晴、気温は22度である。風の影響が出そうな予感がする。
トップランナーにとっても、単調な風景はもうひとつの「敵」!?
フルマラソンを走っているときに、体力や筋力とも戦わなければいけないのだが、もうひとつ大きな「敵」と闘わなければいけない。
「退屈」だ。
そう、2時間10分で走れない僕らは、4時間、5時間かけて42.195kmを走りきる。それだけの長時間走っているとその状態に飽きてしまい、退屈を感じるようになるのだ。
音楽を聴く人もいるし、1キロごとのラップタイムをとったり、観客とハイタッチを交わすことでも、だいぶ気持ちと脚を「前に」持って行けるのだが、それでも周囲の風景が単調になってくるとつらかったりする。
以前に男子マラソン日本記録保持者の高岡寿成さんにお話をうかがったときにも、「カーブひとつが身体と気持ちの刺激になるんです」とおっしゃっていて、トップランナーでも同じなんだということに驚いた。(ちなみに高岡さんは男子マラソンのTV解説を担当されるそうです)