ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
王者・中国と日本は何が違うのか?
体操男子団体の敗因から徹底分析。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2012/08/05 08:02
「中国を超えるのは難しい」と悔しさを滲ませコメントした内村(写真中央)。団体戦後の、個人総合金メダルに対しては中国メディアからも絶賛されていた。
'04年以降負けなしの中国と、日本は何が違うのか?
本来カウントされるべき技が認められていないということで日本チームが得点確認の申告を行った結果、内村の得点は13.466から14.166へ修正され、日本は4位から2位へ上がった。
それにともない、2位の英国が3位に、3位のウクライナが4位になるという、「後味の悪い試合」(内村)。日本は、団体総合予選5位から2位に上がったことで、辛うじて3大会連続でメダルを死守したことにはなるが、どの選手も喜びは半分程度だった。
この結果、'04年アテネ五輪で日本が金メダルを獲得したのを最後に、以後の世界選手権と五輪ではすべて中国が団体優勝していることになった。
では、中国との差はどこにあるのか。
主将を務めた田中和仁は、「ミスが出たのが中国との差。技術だけじゃなく、メンタルの差もある」と言う。内村も「敗因は昨年、一昨年と同じミスをしてしまったこと」と同調する。
ミスとメンタル、である。
「中国選手のほうが演技の完成度が高く、演技に余裕があった」
ミスに関しては、この場合は技術面で劣るという意味も含まれているだろう。
アテネ五輪金メダリストの塚原直也は「昨年の世界選手権のときからそうだったが、中国選手のほうが演技の完成度が高く、一つ一つの演技に余裕があった。逆に日本は、内村選手以外の選手は10割に近い力でやっている」と説明する。10割ではなく7、8割の力でできる演技構成ならミスの危険性は自ずと低くなる。
メンタル面ではどうだろうか。1回の選考会のみで代表選手を決める日本競泳陣が、一発勝負によるメンタル強化という方策を採って成功。ロンドン五輪ではメダルを量産している。
競泳と比較すれば、体操は4月の2次選考会と5月の最終選考会で計4回の試合を行ってその合計点で決めるというやりかたになっている。果たしてこのやり方でいいのか。
また、海外での試合への順応性を見るために、国外で行われる大会で上位に入った選手にポイントをつけるというやり方も考えられるだろう。