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錦織圭、92年ぶりのベスト4は逃すも、
五輪テニスに光を当てた快進撃。 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byGetty Images

posted2012/08/03 13:10

錦織圭、92年ぶりのベスト4は逃すも、五輪テニスに光を当てた快進撃。<Number Web> photograph by Getty Images

準々決勝、第15シードの錦織は、第8シードのデルポトロと対戦。第2セットはタイブレークまで粘ったが、同世代最大のライバルの壁は厚く、4-6、6-7とストレート負けを喫した。

 6月30日のあの試合から、まだ1カ月しか経っていなかった。

 ウィンブルドン選手権の3回戦で、錦織圭はフアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)に3-6、6-7、1-6と完敗を喫していた。観客が固唾を呑むような激しい打ち合いが見られたが、そのほとんどをデルポトロに支配された。試合後、錦織は「彼のボールは深いし、重い。深いところに入ってきた時には、自分から攻められず、コースを変えることもできなかった」と肩を落とした。

 リベンジの機会は意外に早く訪れた。両者の再戦は、ロンドン五輪4強入りをかけての戦いとなった。舞台も、ひと月前と同じウィンブルドン、オール・イングランド・クラブの1番コート。ただ、試合内容は前回とはまったく異なるものとなった。

 錦織の攻めが早かった。3回戦で世界ランク5位のダビド・フェレール(スペイン)を破った時のように、常に自分からラリーのコースを変えて、相手を振り回した。一本調子にならないように、スライスやドロップショットを交ぜて打ち合いのリズムに変化をもたせた。前回の対戦では、相手ボールに威力があって受身に回る場面が多く、「もう少しリスクを負って攻めていけばよかった」と悔やんだ錦織は、その反省を早速、生かしていた。

会心のショットも、デルポトロが築いた城壁はなかなか崩せず。

 この試合に限らず、五輪での錦織は意欲的な攻撃が目立った。“様子を探るようなラリーを続けても良いことはない”とでも言うように全力でラケットを振り切った。その積極性が実を結んだのが、フェレールを破った3回戦だった。「こういうプレーが自分の一番いいプレーなのかと再認識した」と試合後のコメントも力強かった。

 過去3戦3敗のデルポトロを破るには、アグレッシブにいくしかない。錦織の戦う姿勢は決してぶれることがなかった。

 しかし、デルポトロが築いた城壁は難攻不落だった。会心のショットをコーナー付近に突き刺しても、長いリーチで切り返された。スライスでチェンジオブペースを図っても、揺るがなかった。錦織はよく攻めたが、相手も弱みを見せない。ウィナー(ラリーで相手がボールに触れずに決まるポイント)はぽつぽつ増えたが、相手がミスをしてくれなければポイントは量産できない。ゲームは常に一進一退だった。

【次ページ】 第2セット、追い上げる錦織の足音におびえたデルポトロ。

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