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準決勝で豪州に勝てばW杯出場決定!!
美しくも強い、なでしこサッカー。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byMutsuko Yamasaki
posted2010/05/26 10:30
素早いパス回しとポゼッションの連動性でアジア屈指のサッカー戦術を見せるなでしこジャパン。男子代表とは異なり、日本人の身体特性を生かしたサッカーを完成させつつある
豊富な資金力を盾に必勝態勢で臨むオーストラリア。
さてその日本が準決勝で当たるのが、オーストラリアである。選手層が厚いプラス面と、冬の国から来ているというコンディション調整でのマイナス面。これらを加味して、グループリーグは徹底したターンオーバーで各試合を戦った。すでに準決勝進出を決めた後となる中国との最終戦は控え組で臨み、0-1と敗れたため2位となっただけで、実力は中国より確実に上だ。
この大会にかける豪サッカー協会(FFA)の熱意は、並々ならぬものがある。ユース年代の女子W杯アジア予選でたて続けに出場権を逃がしたため、フル代表のW杯予選となる女子アジア杯ではなんとしてでもドイツへの切符を得るべく、今年初頭からチームを手厚くサポートしているのである。候補も含めた代表選手全員に5月まで毎月基本給を払った上で、アジア杯では出場サラリーも支給している。そして幾度となく、キャンプや対外試合を行ってきた。東アジア選手権を欠場した北朝鮮を3月にブリスベンへ招き、テストマッチ2連戦を行ったのもその一環である。何せFFA会長は、“オーストラリアで二番目の金持ち”と言われるショッピングモール・チェーンの経営者。財布の心配をする必要はない。
なでしこらしい美しいサッカーで身体面の不利を克服せよ!
東アジア選手権といえば、豪セルマンニ監督は大会期間中に東京を訪れ、日中韓の試合をつぶさに視察してもいた。彼はトムソン監督時代、サンフレッチェ広島でヘッドコーチを務めた人物。日本サッカーの特徴は熟知している。
彼が率いるマチルダス(オーストラリア女子代表の愛称)は体の大きさと高さと速さを前面に押し出して、シンプルなサッカーをしてくる。なでしこにとって最もやりにくいタイプの相手だ。
だがしかし佐々木則夫監督は、世界レベルの戦いの中でまさにそうした相手を打ち破るために、現在のスタイルを選手たちに叩き込んできたのだ。少し気は早いが来年の女子W杯に向けて格好の試金石となるのが、オーストラリアとの準決勝なのである。この戦いに勝てないようでは、仮に3位通過でドイツ切符を手にしたとしても、本戦での躍進はおぼつかない。
加えてマチルダスのエースFW、並外れた快足の持ち主であるデ・バンナは中国戦で相手GKと激突して脚を骨折、以降の試合の欠場が決まっている。
また日に日に蒸し暑さを増している成都の気候は、いくらターンオーバーで各選手の体力を温存してきたとはいえ、南半球人にかなり厳しいものであることは間違いない。
魅力的なスタイルだから勝ち抜けるとは限らないのがサッカーの恐いところ。しかし様々な要素を考え合わせれば、なでしこは日本人らしさを活かした美しいサッカーでマチルダスを撃破しなければならない。
それは彼女たちに課せられた、もはや義務である。