ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
モロッコ戦はスペインを反面教師に!
山口螢らが語る最大の懸念とは?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoki Ogura/JMPA
posted2012/07/29 14:20
スペイン戦、ボランチの山口螢は、豊富な運動量を生かし、東、清武らと連動した守備でスペインの巧みなパスワークを寸断。日本の勝利に大きく貢献した。モロッコ戦に向けても、浮かれることなく、冷静な分析と対策を語ってくれた。
「スペイン戦のスペインにならないように」(山口螢)
確かに、日本のカウンター戦術は、FW一人の能力に頼る旧式ではなく、高速で、かつ2、3人が連動する、いわゆるレアル・マドリー型だ。しかもコレクティブに連動しているので、次の攻撃に繋げられるという利点もある。永井が相手DFに苦しんでも、スペイン戦のように清武弘嗣、東慶悟、大津祐樹の3人が永井と近い距離にいれば十分フォローできるので、それほど危惧はしていないようだ。
「それよりも、むしろスペイン戦のスペインのようにならないように気をつけたい」
山口は、そう言った。
守備のブロックをしっかり作り、ボールを取るところ、流すところのメリハリを付けた日本の守備に、スペインは攻め手を失っていた。そのままズルズルと攻めあぐねたまま時間を浪費し、敗れた。
今回、モロッコは、この時の日本と同じ戦術でくるかもしれない。そうなった場合、日本は、ボールを保持する時間が長くなってもゴールに迫る効果的な攻撃ができなければ意味がない。山口の懸念は、その時、スペインのように日本がなり、攻め手を欠いてしまうことだ。
吉田麻也が語るモロッコ戦2つのポイント。
日本の守備陣を統率し、スペインを完封した吉田麻也も、そこが最も危険だという。
「慢心はないと思いますし、負ける気もないですけど、スペインのようにならないためには、サイドからを含めて攻撃のパターンを増やすこと。チャンスに決め切ること。モロッコ戦は、この2つが最大のポイントになってくると思います」
スペイン戦では、後半、再三のチャンスをフイにして自分たちで試合を苦しくしてしまった。今後の順位も考えれば、得点は多ければ多いほど良かったが1点に終わった。吉田の発言は、次のモロッコ戦はあれほどチャンスを逃せば勝てないという危機感の表れでもある。
実際、アトランタ五輪の時もブラジルには勝ったが、次戦のナイジェリアに負け、日本はグループリーグ敗退を喫した。過去の歴史にもグループリーグ突破の難しさが刻まれているのだ。金星を挙げた日本が、モロッコに足をすくわれる可能性もなくはない。