F1ピットストップBACK NUMBER
ザウバーの地元メディアから猛批判。
可夢偉の心、チームスタッフに届かず。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2012/07/15 08:02
2010年には山本左近(HRT)が乗るマシンがピットで事故を起こしメカニックが負傷しチームに2万ドルの罰金が課されている。今季のヨーロッパGPでは、トロ・ロッソのベルニュがピットレーン上を含めたいくつかの違反で2万5千ユーロの罰金を課された。
可夢偉を責めるならば、ピットスタッフも同罪である。
もし、ザウバーチームのオーナーであるペーター・ザウバーが、この事故をもって、一部のスイスメディアと同じように、来季のドライバーラインアップを考え直すというのなら、その前に再考してもらいたいことがある。
それは、これまで度々、犯してきたチームのミスである。
チームメートのセルジオ・ペレスが表彰台に上がったマレーシアGPでは、ペレスと同じタイミングでピットインしようと無線で叫んでいた可夢偉の声を無視したことは、どのように考えているのだろうか。
第8戦ヨーロッパGPのレースでは、表彰台も狙える4番手をレース序盤に走行しながら、ピットストップ作業で左フロントタイヤの交換作業に手間取ったために大きく後退したばかりである。
さらに、今回のイギリスGPの予選Q2では、チームが装着させるタイヤの種類を完全に読み違えるという致命的なミスを犯していた。
もし、可夢偉から来季のシートを取り上げるというのなら、ミスを犯したスタッフの雇用を見直すことのほうが先ではないか。
スタッフのミスにも文句ひとつ言わない可夢偉の潔さ。
しかし、そんなことをしていたら、スタッフはいくらいても足りなくなる。それはドライバーだって、同じである。
前戦ヨーロッパGPでタイヤ交換作業をミスしたスタッフを可夢偉は責めなかったという。責めなかったばかりか、こう言ってイギリスGPのレースに臨んでいたのである。
「彼らがミスしてもいいよう、その分、僕がコース上でタイムを稼ぎますよ」
そういうセリフを言えるドライバーが、いったいどれだけいるだろうか。
今回、このペナルティを下したレース審査委員のひとりは、往年の名ドライバーであるナイジェル・マンセルだった。じつはこのマンセルも'89年のポルトガルGPでピットストップミスを犯し、失格を言い渡された経験を持つ。ワールドチャンピオンになったのは、その3年後の'92年のことである。