フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
経験を積むほど難しくなるのがゴルフ!?
失敗に強い“アラフォー”プロの活躍。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2012/06/08 10:30
ダイヤモンドカップでは、2日目から首位に立った藤田寛之が通算14アンダーの274で今季2勝目を上げた。
失敗の記憶は心の奥底に澱のように溜まっていく……。
ダイヤモンドカップの直前に行われた全米オープンの予選会でのこと。
1日36ホールのうちに藤田は「チャックリのミスを3回もやった」という。それが心に黒く染みついていたのである。
「プロになってからはあまり記憶にないミスだったので、グリーン周りのアプローチに若干の不安要素があるんです。芝が薄いのでパターで転がした方が確実。パターで打てるライでもあったんでね。もちろん技術的に打てないアプローチではない。ただ、練習ではよかったとしても、やっぱり心の中に残るものはあるんですよ。だから、だましだましやっていかないといけない」
失敗の記憶はそのたびにきれいさっぱり洗い流せればいいが、実際は心の底に澱のようにたまっていき、真っ白だったはずのキャンバスにシミやソバカスを作る。
決して難しくないショットだったとしても過去の失敗があるから、知らず知らずのうちに心と体がすくむ。ベテランであるほど積み重なったミスの記憶は数多く、分厚くなっていくのである。それを克服するすべを持たない限り、彼らはツアーで生き残っていけない。
「悪い経験」が呼び起こす「怖さ」といかに向き合うか。
'06年の日本ゴルフツアー選手権などツアー2勝を挙げている高橋竜彦は、今季シードを失って出場機会が大幅に減った。38歳を迎えた高橋も言う。
「技術は若い時よりも今の方があると思うけど、悪い経験が重なるといろいろな怖さが出てくる。やっぱり悪い経験の方が覚えているものだからね。そこにどう対抗していくのかという方法や、ゴルフに対する考え方と距離感が大事。今はゴルフをどういう気持ちでやろうか考えて、プレッシャーを感じながらでも楽しめている」
シードを失いたくないと結果に縛られ、ミスを恐れてドライバーイップスにまでなった高橋は、今季試合数が減ったことで自然とゴルフと少し距離ができた。おかげで再びプレーを楽しめるようになったのだという。
キャンバスを少し遠ざけてみたら、今まで近すぎて見えてなかった空きスペースが見つかったということだ。また、藤田のように「怖さを消すには技術的に絶対に揺るがないものを身につけるしかない。自分はそうしないと克服できない」という選手もいる。方法論は人それぞれである。