フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
経験を積むほど難しくなるのがゴルフ!?
失敗に強い“アラフォー”プロの活躍。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKYODO
posted2012/06/08 10:30
ダイヤモンドカップでは、2日目から首位に立った藤田寛之が通算14アンダーの274で今季2勝目を上げた。
藤田寛之と兼本貴司、42歳と41歳の2人がささやき合っていた。
「まだ真っ白だね。ゴルフのキャンバスも心も真っ白」
「おれたちなんてもうどこにも描けるところがないのになあ」
5月下旬のダイヤモンドカップ。2人がうらやんでいたのは同組で回った22歳のルーキー、藤本佳則の若々しさだった。藤田は「藤本君は肌がいい。真っ白で。僕は長年の蓄積で真っ黒になっちゃってるから」と笑ったが、ベテランたちにとってまぶしく映ったのはルーキーの美白っぷりばかりではない。
「僕らのメンタルはもう結構グレーなんですよ」
兼本が言う。
「僕らのメンタルはもう結構グレーなんですよ。あそこにいっちゃいけない。ここで曲げちゃいけない。ダフっちゃいけない。いろんなことがインプットされてしまっている。本当にゾーンに入った時なら消えるかもしれないけど、普段はそういうことが常に頭に残りながらやってるんです」
どんなスポーツであっても、あるいはスポーツに限らず、経験というのは大きな武器であり、代え難い貴重な財産である。ましてやゴルフは経験のスポーツとも言われる。
スプリントやフィジカルコンタクトがないため、体力的な衰えを実感するのはサッカーや野球などに比べればはるかに遅いはず。となれば、年月を重ねたベテランのアドバンテージは計り知れないのではないか。
ところが、アラフォー世代に言わせると、ことはそう単純ではないらしい。
藤田はダイヤモンドカップでグリーンエッジからのアプローチにパターを多用していた。ある意味アマチュア的な安全策で、少なくとも小技の名手にしては珍しいクラブ選択に見えた。
もちろんこれには理由があった。