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さよなら、グアルディオラ監督!
国王杯決勝に見た愛弟子たちの激走。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/05/28 15:00
スペイン国王杯決勝の翌日。ホームスタジアムであるカンプノウで開かれた優勝セレモニーでのグアルディオラ監督。スタンドを埋め尽くしたファンに、バルサの監督として最後のタイトルとなる国王杯優勝を報告した。
国王杯でアスレティック・ビルバオを破り優勝したバルセロナ。グアルディオラにとって14個目のカップは、バルサを率いた4年間で最後のものとなった。
ELに敗れていたビルバオのモチベーションは高く、サン・マメスでの対決のような一進一退の拮抗した試合が予想されたが、ふたを開けてみるとバルサがあっさりと試合を決めてしまった。
それも、たった24分間で。
開始からわずか3分でペドロが決めると、メッシが追加し、再びペドロ。30分とたたないうちにスコアは3-0となり、その時点で試合はほぼ決まってしまった。
試合後、ビルバオのイラオラはどこかあきらめたような様子でこう振り返っている。
「バルサと僕らの間には大きすぎる差があった。勝負はすぐに決まってしまった」
がむしゃらに走り続けて、各々の想いをペップに届けたイレブン。
イラオラが言う大きすぎる差は、単純な技術面の差だけではなかった。
この試合のバルサのポゼッションは57%。彼らの平均よりも低い数字だ。つまり常にボールを支配して攻撃を続ける、という、典型的なバルサ圧勝の試合パターンではなかったのである。
たとえばチャンピオンズリーグ準決勝のチェルシーとの試合で見せたような圧倒は、そこにはなかった。
むしろこの試合でのバルサの優勢を生んだのは、ひとりひとりの選手に宿っていた気持ちの強さであり、激しさだった。
ピケは言う。
「今日は全員の気合が違った。キックオフからとにかく走ってプレスをかけるんだと、みんなが決めていたんだ。序盤からかなりの勢いでいったね。監督の最後の試合をいい形で終わらせたかったから」
ペドロは相手を追い続けた。メッシが、シャビが、イニエスタが、それに続いた。このチームの代名詞でもある技術やパスワークは、この試合においては勝因のひとつに過ぎない。
クラシコよりも、あるいはCLの大一番よりも、ひとりひとりの勝ちたいという意欲は上回っていたように思う。