フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
青木功、松岡修造らとどう話す?
ゴルフ中継アナウンサーの秘密。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/05/23 10:30
石川遼は「とおとうみ浜松オープン」に出場後、6月14日~17日に行なわれる全米オープン出場のため渡米した。
「ただのゴルフ好きのおっさんとして」実況する意識!?
オリンピックや野球、サッカーなどの実況経験も豊富な森下アナ。毎年の全米オープンや全英オープンも担当してきたそんな大ベテランも、ゴルフに関しては放送席のモニターが頼りになる。会場の声援が漏れ聞こえてくることがあったとしても、劇的な優勝の瞬間を18番グリーンの脇に立って実況するわけではないのだ。
「僕が経験した中でテレビモニターを見てしかしゃべらないのはセーリングとトライアスロンぐらいかな。ああいうのは肉眼で見ながらしゃべることができないけど、ゴルフはそれに近いですね。マラソンだって実況車に乗って間近で見ているから」
ただし、ゴルフ実況に臨む森下アナはそのハンデを逆手に取ったようにむしろ喜んで一歩引く。
「特にゴルフの場合は『僕もただのゴルフ好きのおっさんとして視聴者の皆さんと同じテレビ画面を見ているんですよ』という感覚を大事にしてます。しかも、その隣には青木功さんが解説者としていてくれるわけですから。伝え手というより、ただ楽しむということですよね」
“沈黙”も、語らず視聴者に臨場感を感じさせるコツ。
気になる解説陣の取り回しについても秘訣を教えてくれた。
「僕は実況というよりも、誰にどう話を振って、全体としてどうなのかを考えてます。疑問に思ったことは羽川さんが青木さんに質問してくれることもあります。それはお前の仕事だろうと言われるかもしれないけど、全体として質問が投げかけられて、その答えが出て、視聴者が納得してくれれば、僕は黙っていて全然構わない」
過度に情報をひけらかそうとはしないし、必要以上に自分の言葉で装飾しようともしない。コースに出ている解説者が小声でしゃべったり、リンクスの風音がマイクを伝ってノイズになれば、語らずとも視聴者に臨場感を感じさせることはできる。勝負どころでは会場のギャラリーと同じように沈黙し、一打の緊張感を言葉以上に忠実に伝えようと考える。このあたりのスタンスが視聴者から好感をもたれる理由なのだろう。