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<ナンバーW杯傑作選/'93年11月掲載> 夢の終わり、真実の始まり。 ~ドーハの悲劇。ラスト10秒で地獄へ~ 

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大住良之

大住良之Yoshiyuki Osumi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2010/05/11 10:30

<ナンバーW杯傑作選/'93年11月掲載> 夢の終わり、真実の始まり。 ~ドーハの悲劇。ラスト10秒で地獄へ~<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

育成段階からオフトに全権を委任するべき理由。

「敗軍の将」は、語らず、その地位を去るべきだろう。「日本をワールドカップに出場させること」を唯一の目標としてきたオフトの辞任、あるいは契約の不継続は、ある意味で当然だ。

 だが、日本のサッカーの現状を見てほしい。私たちのサッカーは、欧州や南米のように何十年も確立された形で行われているわけではない。それがようやく、オフトの手で「形」になろうとしているところなのだ。

 だから私は敢えて言いたい。

「日本代表チームはオフトを手放してはならない」

 もっといえば、オフトの権限を拡大し、中・長期的に代表チームを強化する仕事を任せるべきだ。

 オフトは、優秀なコーチ、監督であると同時に、非常に優秀なマネジャーでもある。ひとつの目標に向かったプロジェクト全体の計画づくりと管理ができる人材だ。

 そのオフトに、ナショナルチームを頂点として、オリンピック代表(21歳~23歳)、ユース代表(19歳~20歳)の総責任者の仕事を任せるのだ。各チームのコーチはオフトが選任し、オフト自身が強化の計画をたて、コーチたちに実行させる。

 それによって、現在は各年代でバラバラな強化プロジェクトを一本筋の通ったものにできる。将来的に代表チームでどういう役割を担うかを考えた選手の育成が可能となる。

「選手の育成は各所属クラブの仕事」は理想論。

 選手の育成は、本来代表チームの責任ではなく、各所属クラブの仕事である。代表チームというのは、そのときどきの監督が自分のプランに適した選手をピックアップし、チームとしてまとめあげて国際試合や大会を戦うものだ。

 だが、それは理想論であって、サッカーの先進国にあってさえ、そうした方法だけで代表チームが運営されているわけではない。

 ドイツでは、ジュニア代表の監督が次代の代表監督になる。それは、ユース年代から選抜し、国際試合の経験のなかで成長させてきた選手を、自分が監督になったときに中心選手として使うことができるからだ。

 代表選手のすべてがこうした経歴でワールドカップに出場するわけではなく、なかには無名の存在から国内リーグで活躍して選ばれる選手もいる。だが、多くの選手が「ユース代表」からU-21代表を経てくるという事実は、今日の国際試合で戦うことがいかに経験を必要とするかの証明だ。

 とすれば、できるだけ早い時期からトップの代表でプレーすることを想定した選手を選抜し、経験を積ませることが必要となる。私がオフトにユースやオリンピックチームの責任も任せようと主張するのはそのためだ。

【次ページ】 「ドーハの悲劇」を忘れられる日がくるのだろうか……。

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