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<ナンバーW杯傑作選/'93年11月掲載> 夢の終わり、真実の始まり。 ~ドーハの悲劇。ラスト10秒で地獄へ~ 

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大住良之

大住良之Yoshiyuki Osumi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2010/05/11 10:30

<ナンバーW杯傑作選/'93年11月掲載> 夢の終わり、真実の始まり。 ~ドーハの悲劇。ラスト10秒で地獄へ~<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

「ドーハの悲劇」を忘れられる日がくるのだろうか……。

 もし私に「日本スポーツ大賞」のようなものを選ぶ権利があるとしたら、迷うことなくオフト監督の日本代表を選考するだろう。Jリーグのスタートという歴史的な年に、日本中の何千万という人びとに期待させ、熱狂させ、感動させ、最後の最後に天国から地獄へ突き落とすようなドラマを演じるなど、誰にもまねのできることではない。

 スポーツでは勝敗がすべてだという人がいる。だが、スポーツほど勝敗に意味のないものもない。負けたからといって、人生が終わるわけではない。

 それよりも、オフトの日本代表がこれほどまでに私たちを夢中にさせてくれたこと、冒険旅行にも似た心の高鳴りを与えてくれたことに感謝したい。

 大会終了後の表彰式で、大会組織委員会のナセル・ムバラク委員長はこんな話をした。

「きょうの試合には大差がついたものもあったし、歓喜も失望もあった。しかし、それこそ、私たちがサッカーを愛する理由であるにちがいない」

 そのとおりだと思う。残り10秒で天国から地獄へ突き落とされることも、最後の最後まで絶望的な戦いを繰り広げた韓国のイレブンが、日本が引き分けたと聞いた瞬間にグラウンド上で大声で泣きじゃくったことも、すべては「これがサッカーだ」の一言でくくられ、歴史のなかに綴じ込まれていく。

 だが、だが、だが……。

 あの夜のことを、最後の最後の瞬間に日本のゴールネットが揺れた瞬間を、忘れられる日がくるのだろうか。

 くるとすれば、4年後、'98年ワールドカップの予選で、一段と成長した日本が輝かしいサッカーを見せ、韓国やサウジアラビアを圧倒して出場権を得たときにちがいない。だが、4年間とは、なんという長さなのだろう!

ドーハの悲劇、20年目の真実。

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ドーハの悲劇、20年目の真実。

 

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