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ハミルトンの爆発とレンジャーズ王朝。
~45年ぶりの三冠王誕生なるか?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/05/20 08:02
5月8日、1試合4本塁打を記録したハミルトン。今までのシーズン自己最高記録32本は容易に更新しそうな勢いだ。
ハミルトンの残留交渉が成立すれば黄金時代は長期化も。
1981年5月21日生まれのハミルトンは、今年31歳だ。レンジャーズ在籍は'08年からで、今季終了後にはFAの資格を得る。レンジャーズは開幕前に「10年総額2億ドル」の金額を提示して、残留を求めたと伝えられている。この交渉は、ハミルトンの飲酒問題が再発したこともあっていったん棚上げされているが、Aロッドやアルバート・プホルスの前例を見る限り、金額的にはまず妥当なところだろう。
そうなると、レンジャーズの黄金時代は意外に長くつづくのではないか。ハミルトンを筆頭に、ベルトレ、キンスラー、ヤング、クルーズ、アンドリュスと並ぶ打線の破壊力は30球団随一といっても過言ではないし、先発投手陣5人のうち4人(ダルビッシュ、ホランド、フェリース、ハリソン)までが26歳以下という若さも魅力的だ。
いいかえれば、少なくともあと3年、この球団は優秀な先発投手陣を、さほど高くない年俸で維持することができるのだ。しかもレンジャーズの防御率は、過去4年間、着実に改善されてきている。以前がひどすぎたことは事実だが、今季などはなんとリーグ1位の防御率を誇っているのだ。
頭脳的な投球を見せるダルビッシュはまだまだ進化する。
なかでも注目すべきは、やはりダルビッシュ有のピッチングIQの高さだろう。私は開幕前、彼がデヴィッド・コーンの後継者になることをひそかに期待していたのだが、これまで登板した7試合から連想するのは、上昇期に入ったころのペドロ・マルティネスの姿だ。とくに、腕の位置が変わっても変化球の切れや速度が落ちないのは、両者に共通する魅力といえる。身体能力や度胸はもともと十分なのだから、「ピッチングの命は頭脳」という掟さえ忘れなければ、ダルビッシュはまだまだ伸びるにちがいない。
というわけで、もしハミルトンが残留し、チームの成長とダルビッシュの成長が歩調を合わせれば、今後5年近く、レンジャーズの王朝は継続される可能性が高い。問題は、打線の高齢化。ヤングやベルトレと世代交代する形で、レオニス・マーティンやフリオ・ボルボンといった若手が伸びてくると面白いのだが。