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ハミルトンの爆発とレンジャーズ王朝。
~45年ぶりの三冠王誕生なるか?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/05/20 08:02
5月8日、1試合4本塁打を記録したハミルトン。今までのシーズン自己最高記録32本は容易に更新しそうな勢いだ。
強いとは思っていたが、レンジャーズが本当に強い。投打の歯車がしっかり噛み合って、激戦が予想されたア・リーグ西地区で悠々と首位を走っている。
なかでも凄まじいのは、主砲ジョシュ・ハミルトンの大爆発だ。
34試合に出場して、打率=4割2厘、出塁率=4割5分7厘、長打率=8割4分8厘、OPS=1.305、本塁打=18本、打点=45。
34試合で18発というハイペースは、1923年のサイ・ウィリアムズ(フィリーズ)以来の開幕ダッシュだ。このペースで進むと、年間本塁打数は80本を上回る計算になる。薬物抜きでバリー・ボンズの記録(年間73本)を超えたりしたら、奇跡と呼ぶほかない。
それは無理かもしれないが、もうひとつ期待してしまうのは、カール・ヤストレムスキー('67年)以来の三冠王誕生だ。シーズンが4分の1しか経過していない時点でこんな占いを立てるのは軽薄すぎるだろうか。ただし今季は、ナ・リーグにもマット・ケンプという有力候補がいる。できれば両者とも、8月ぐらいまでは希望をつないでもらいたい。
史上16人目の1試合4本塁打を放った、恐るべき爆発力。
とくにハミルトンの場合は、パワーとスピードの融合が全盛期のミッキー・マントルを思わせるところがある。怪我が多く、性格がややクレイジーなところも、マントルに似ている。これはプラスにもマイナスにも働く特性だ。マイナスに働けば、大好きなヘッドスライディングをやりすぎて怪我をしてしまいそうだが、プラスに出れば、恐るべき爆発力につながる可能性がある。
たとえば2012年5月8日、ハミルトンは対オリオールズ戦で1試合4本塁打の離れ業をやってのけた。史上16人目の難事業達成だが、これは完全試合を達成した投手(通算21人)よりも数が少ない。古くはルー・ゲーリッグ、チャック・クライン、ウィリー・メイズといった大選手の名が浮かぶ。21世紀に入ってからは、ショーン・グリーン('02年)とカルロス・デルガド('03年)が派手な花火を打ち上げた。
グリーンの場合は、6打数6安打4本塁打+二塁打1本+単打1本で、史上最多の合計塁打数(19)を積み上げた。デルガドは、4打数4安打4本塁打を記録した史上唯一の打者だ。一方、ハミルトンのケースは、5打数5安打4本塁打+二塁打1本で、合計塁打数が18。もし三塁打を打っていれば、グリーンの塁打数に並ぶところだった。