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香川のドルトムントがブンデス2連覇。
偉業をもたらした「信じる」気持ち。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAP/AFLO
posted2012/04/23 12:40
4月21日のボルシアMG戦、優勝を決定づける2点目を挙げ、クロップ監督と共に喜ぶ香川真司。昨季は、リーグ前半戦MVPに輝きながらも怪我によって長期離脱した香川だったが、今季は欠場わずか3試合。13得点(32節終了時点)を挙げ、文字通りエースとしての活躍を見せた。
大きな転機となったマインツ戦のハーフタイム。
香川は当時、ハノーファー戦からの8日間についてこんな風に振り返っている。
「監督はミーティングのときから、『このままじゃダメだ。もっと集中してやらないといけない』と常々言ってましたし、それで練習からピリピリした部分もありました。ただ、昨シーズンあれだけのサッカーが出来たんだから、何が足りないかといったら、そういう姿勢だと」
そんな監督の叱咤を受けた後、9月24日に行なわれたマインツ戦。ゲームを支配しながらも、右サイドバックのピシュチェクのパスミスを相手に奪われて、先制を許してしまう。前年度王者としては過去最低クラスの成績しか残せていなかった、当時の低迷ぶりを象徴するような試合だったのだ、少なくとも前半までは――。だが、相手にリードを許したままで迎えたハーフタイムにも、監督は繰り返した。
「試合内容は良い。チャンスは来る。俺たちは、この試合に必ず勝つんだ!」
結局、苦しんだ末、後半ロスタイムに前半にミスを犯したピシュチェクのゴールが決まって、ドルトムントが劇的な逆転勝利を決めた。
ドルトムントはこの試合から現在に至るまで、ブンデスリーガ新記録となるリーグ戦26試合負けなしという強さを見せ、優勝。マインツ戦の前には当時首位に立っていたバイエルンに勝ち点差8も離されていたが、今では逆にバイエルンと勝ち点差8をつけているのである。
クロップ監督は何かを変えるのではなく、自分たちの強さを信じる道を選び、結果を残したのだ。
オリバー・カーンが語る、ドルトムントとバイエルンの違い。
もう一つの分岐点は、4月11日、勝ち点差3で迎えたバイエルンとの直接対決だ。
ホームゲームというアドバンテージを活かして、ドルトムントが前半からチャンスを作り出し、レバンドフスキのゴールにより1-0でリードしたまま迎えた後半40分。ロッベンをペナルティエリアで倒してPKを与えてしまう。しかし、ロッベンのキックをGKのバイデンフェラーががっちりとつかんだのだ。絶体絶命のピンチを乗り越えたことで、ドルトムントの優勝は決定的になった。
バイエルンのOBでもある元ドイツ代表のオリバー・カーンには、この後のシーンに現在のドルトムントとバイエルンの違いが見て取れたと指摘している。
そのシーンとは、シミュレーションによってたびたび審判を欺いてきたロッベンがシュートを外した直後、ドルトムントのDFスボティッチがロッベンに近寄り、悪態をついた場面だ。カーンは、この試合でロッベンに与えられたPKが不当なものではないとしつつも、こう語っている。
「『俺たちが何が何でもチャンピオンになるんだ』というメンタリティが表れていた。ドルトムントには、クロップ監督とチームが作り上げた、成功したいと願うハングリー精神と攻撃的なアイデンティティがあるんだ」