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TOKYO西側にある桜の新名所を、
自転車に乗って一気に巡礼してみる。 

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疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2012/04/22 08:00

TOKYO西側にある桜の新名所を、自転車に乗って一気に巡礼してみる。<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

20歳の頃に住んでいた家の近所には、こんな綺麗な桜が見られる公園があった。血気盛んなその頃の僕には、この桜の価値が分からなかったんだよなぁ……。

田園調布にはあのチョー有名な桜の名所が。

 さて、目黒を出て、南西に行ってみよう。

 駒沢通りをまっすぐに西、自由通りに出たら、自由が丘に向かって南下していく。自由が丘そのものはパスしちゃおう。真南に行くと、おー、豪邸の数々、上品な人々。ここぞ、かの有名な田園調布とあいなる。

 まず私は東急線の田園調布駅前に行ってみた。あれま、いつの間にやら駅舎が新装開店している。ハイテックでクールな感じの「いかにも東急線」という風情だ。

 でも、ふと横を見ると、昔の駅舎も横に残されてる。懐かしくも暖かい「大昔の高級駅」という感じ。

 その旧駅舎の前に、ああ、ここもみごとな桜だなぁ。

 いわずと知れた日本屈指の高級住宅地、田園調布は、駅を要にした扇形に街ができていて、扇骨の真ん中あたりに当たるのが最もコアな高級住宅地部分。旧い町だ。現在に繋がる形での街の成立が大正年間。家々も歴史を感じさせるものが多い。そして、その必然として、街に立つ桜も古木が多いのだ。そういう桜を横目で見ながら、田園調布の街々を巡っていく。

 高級住宅地だよなぁ。本物のお金持ちが住んでいる地域という雰囲気があるよ。なんつーのか、バブリーな感じがしない。豪邸は豪邸。同じ豪邸でも「金持ちの格が違う」という感じ。

 しばらく走って坂を下っていくと、宝来公園という公園の前に出る。ここの桜も満開中。木の下ではお年寄りたちが、思い思いに憩いの時を過ごしている。

 さらに坂を下って最寄りの駅が多摩川駅に変わる地域。田園調布の片隅、というべきか、住所でいうなら、田園調布本町というところに、さ、着いたぞ。

 ここに有名な「桜坂」はあるのだ。

 たしかに桜坂なんて、全国にたくさんある地名ではあろうが、今となっては、日本で一番有名な桜坂は、まさにここである。

 テレビ番組「未来日記」の主題歌として大ヒットとなった、福山雅治の「桜坂」のモデルが、まさにここだからだ。

平成の新名所“桜坂”に集う人々と、ご近所の声。

 行ってみると、おやー、さすがにすごい。

 福山ファンとおぼしき若い女性(なぜかカップルではなく女性同士)をはじめとして、たくさんの人々が、この桜坂を見にきてる。

 地元のオバさん(坂沿いのアパートに住んでいるのだそうだ)に聞いてみると、これでもかなり落ち着いた方だという。

「一番すごかったのは、5、6年前だったかしらねぇ。あの頃は、この通りがクルマの渋滞渋滞で大変だったんだから」

 彼女によると、桜の季節には、桜坂そのものだけでなく、ここにいたる細い路地もクルマで埋め尽くされたのだそうだ。

「もう、近隣の色んなところからカップルでくるでしょ? 全然動かないの。随分、遠くから来る人もいるみたいでね、なにわナンバーとか、浜松ナンバーとかも見たものよ」

 それが、ある一時期だけに集中するのだろうから、ま、それはタマランな。そういうことのないように、カップルは自転車でくるように(笑)。

 つくづく東京は「桜の都」だと思う。

 でも、桜って、考えてみれば奇妙な樹木なのだ。1年365日のうち、360日はただの地味な木、まったく目立たないくせして、わずかに1週間たらずのその期間だけ、街の堂々、主役となる。

 その間だけは、どこを見ても、視界のどこかに桜が入る。街にぼうっと灯がともる。街が酔う。春の夢を見る。

【次ページ】 お金のかかわるところには桜が咲き誇る!?

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