自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
TOKYO西側にある桜の新名所を、
自転車に乗って一気に巡礼してみる。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2012/04/22 08:00
20歳の頃に住んでいた家の近所には、こんな綺麗な桜が見られる公園があった。血気盛んなその頃の僕には、この桜の価値が分からなかったんだよなぁ……。
今年の桜は特に感慨深かったなぁと思っている人は多いと思うのだ。
なんと言っても震災の翌年だ。昨年のこの時期は到底「桜を愛でる」なんて気分になれなかったからね。
もうひとつは、物理的な、見た目のみごとさだろう。
今年の春の桜がみごとな原因は、昨年の「暑い夏」と「寒い冬」だそうな。このふたつの気候ファクター、つまり暑い夏が桜を大きく大きく育て、長くて寒い冬(つまり春が一遍に来る)が、桜を一斉に咲かせた。
その結果、実際の桜そのものも、ココロの中の桜も、大満開になった。
今年の桜は、なんだか「たわわに咲いた」という感じだった。たわわといえば通常は「実る」だが、今年の桜に関しては「咲く」でも違和感がない。ほんに見事な咲きっぷり。
ちなみにいうと、たしかに今年は、花見の宴のスパークぶりもスゴくて(いや、ヒドくて)上野公園では、急性アルコール中毒で呼ばれた救急車が、昨年の5倍にもなったそうな。
どうかとは思うが、一方で、何だか分かるね、その羽目のハズシ方。そういう春だったんだよ。2012年の春は。
というわけで、今年も桜の東京をめぐろう。
去年が“TOKYOルート24・東バージョン”だったから、今年は西バージョン。西バージョンはオシャレに味わい深いぞ。東のように「ここ」「あそこ」ではなく、往く道々すべてが桜、というのが特徴だ。
新宿御苑は、大人しく、静かに、チョー満員だった。
まずは新宿御苑から。
もちろんここだって、数ある「伝統的な」東京の桜の名所の1つなんだけど、そういう古めの名所の中で、ここが特にスペシャルなのは「アルコール厳禁」であることだ。
入場門の前では荷物チェックすら行われている。アルコールはその場で没収、もしくは入場不可となる。
これ、案外、悪くない。
高歌放吟も、悲鳴も、喧嘩も、青シートの取り合いも、ゲロも、放尿もなく、御苑に集まる人々は、静かに大人しく桜を愛でている。
歩く人、お弁当をひろげる人、たたずむ人、座る人。みなサワサワとさざめきながら、ニコニコ笑いながら、桜を見ている。
園内の桜の種類は、ソメイヨシノに限らず、トウカイザクラ、コヒガン、タイハク、イチヨウなど、約65種1300本。長いこと桜の季節が楽しめるのもいい。
それにしてもスゴい人。
午前中にここに入ったのはいいけど、出るのが一苦労なのだ。ずーっと行列。ふと見るとトイレ前もすごい。特に女子。大行列。傍目で見ていても、これはかなわんなぁ。小さい子はおもらしだろう。おそらく。知らんけど。
それでも大人しく、みなさん桜を楽しんでいる。気のせいか、若干、年齢層が高いかな、ここは。
ということで、御苑をしばしぶらぶら歩いたのち(園内はもちろん自転車はダメよ)、私は恵比寿方面に向かうことに決めた。
行き先は「あの川」の畔だ。
御苑から明治通りに出て、まっすぐに南下。道行きにも桜、桜。東京って街は、本当に桜の都だね。
天現寺の交差点に出てきたら、そこを右に曲がると恵比寿ガーデンプレイスとなる。かつてヱビスビールの工場があった跡地。現在流行りのオシャレ系総合開発の嚆矢とでもいえるだろうか。
でも、ここはまだ桜の名所じゃないよ。
ガーデンプレイスは、昨今の街づくりの中では例外的に桜が少ない。外国人が多いからかな? 理由はワカラン。