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継続すべき“身を削る”被災地支援。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byShiro Miyake
posted2012/03/21 10:31
1勝につき100万円の義援金を震災孤児に贈ることを決めた昨季、楽天は66勝を挙げた。被災地に本拠を置く球団として、支援の取組みはこれからも続く。
「継続することが大切だと思う」
アリゾナの強烈な日差しの下で、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手は、静かにこう語った。
アメリカ時間の3月10日正午過ぎの練習後、日本時間では3月11日になったばかりのことだった。
いつもは公式会見以外の取材には応じないダルビッシュが、「記者の囲みだけで」という形で応じたのは、東日本大震災から1年が経ち被災地へのメッセージを求められたからだった。
「野球人である前に、人間でもあるので。野球をやっていて、いいのかなと思う」
震災直後、ダルビッシュがツイッターで発したこの言葉が、開幕を延期すべきという論争の契機を作った。
様々な論争もあったが、このつぶやきから開幕を2週間余り延期した昨年のプロ野球は、被災地支援という合言葉の下で、機構はもちろん選手会、各チーム、そして個々の選手たちが自分のできる支援活動を行なってきた。もちろんダルビッシュもいち早く5000万円という破格の義援金を送っている。
「僕からしたら(1年間は)早いとは感じますけれど、実際にその現地の方たちからするとすごい長い1年だったと思います。まだまだ元に戻るのは先だと思いますけれど、それが1日も早くなるように、僕たちは、僕たちでできることを頑張っていきたい」
球界からの復興支援は「継続」されているが……。
一つの節目を迎えた日、遠いアメリカの地で、ダルビッシュは被災地復興への思いをこう語り、続けたのが「継続」という冒頭の言葉だった。
もちろん今年も、球界は被災地の復興支援のために、引き続きさまざまな活動に取り組んでいる。
3月10日に東京ドームで行なわれた日本代表対台湾代表との復興支援ベースボールマッチもそうした活動の目玉の一つだった。今後も12球団が様々な場所でチャリティー活動や募金を行ない、来年7月には原発事故の被害も大きい福島でのオールスターゲーム開催などの計画もあるという。
ただ、である。
ちょっと残念なのが、昨年、被災地仙台に本拠地を置く楽天がチームの1勝につき100万円を、巨人が入場者数1人について10円の義援金を送った活動が、1年間で終わってしまうことだった。