プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プロ野球を観にいくことが力になる!
継続すべき“身を削る”被災地支援。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byShiro Miyake
posted2012/03/21 10:31
1勝につき100万円の義援金を震災孤児に贈ることを決めた昨季、楽天は66勝を挙げた。被災地に本拠を置く球団として、支援の取組みはこれからも続く。
プロ野球の“自粛”はどういったプラスを生んだのか?
昨年の開幕論争のときに、どうにも腑に落ちないことがあった。
あの状況でプロ野球とプロ野球選手たちにできることとは、いったい何だったのだろうか?
「いま、野球で勇気づけられるというのは、思い上がりだと思う」
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ヤクルト・宮本慎也内野手が発したこの言葉は、今でもその通りだと思う。また、ダルビッシュがつぶやいたように、人として野球をやっている場合ではないという考えも、もちろん当然の感情であるだろう。
ただ、プロ野球選手たちは野球を止めたからといって、被災地にボランティアに入れるわけではない。
そうして球界が選択したのは静かに練習を続けること。誰も観客のいない球場で練習試合をこなして開幕への調整をすることだった。
こうして野球(の興行)をやらないことが、結果として何らかのプラスを生んだのか? そのことにはいささか疑問を抱かざるを得なかった。
球界が担うべき復興支援のスキーム作りが重要。
だから、このコラムでも球界は「勇気ではなく義援金を」と、速やかに環境の整ったところから開幕を目指して、その収益を被災地支援に向けるべきだということを書いたわけだ。
野球選手ができることは、やっぱり野球しかないはずだからだ。そして野球ファンにとっては、贔屓のチームを応援するために球場に足を運ぶことが決してマイナスなことではない──そういうスキームが作り上げられれば、「野球の力」が復興へとつながるイメージが具体的に出来上がる。
それを実行したのが、前述した楽天と巨人の活動だったわけだ。
募金活動は人の集まるところでやる方が効率的だし、選手たちが使った道具や着用したユニフォームだからこそできるチャリティーオークションもある。そうして集まったお金も、もちろん大事な支援金であることに異論はない。