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アトレティコに戻った“チョロ”シメオネ。
愛すべき嫌われ者がもたらした改革。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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posted2012/02/24 10:31

アトレティコに戻った“チョロ”シメオネ。愛すべき嫌われ者がもたらした改革。<Number Web> photograph by AFLO

知将マンサーノの後継としてアトレティコの監督となったシメオネは、典型的な闘将タイプだ

シメオネの監督就任後、失点数が大幅に減少。

「我々が望むのは、アグレッシブで激しく、勇敢に戦い、スピーディーなカウンターを武器とするチーム。つまり、アトレティコのユニフォームに備わるアイデンティティを体現するということだ。我々はドブレッテを成し遂げたチームのスピリットを取り戻さなければならない」

 リーグ最少の42試合32失点に抑えた堅守と、パンティッチ、ナルバエス、ペネフらアタッカーの能力を生かした速攻。16年前に2冠獲得を実現したスタイルの復活を目標に掲げたシメオネのチーム作りは、就任直後から周囲の予想を上回る変化をチームにもたらした。

 何よりも顕著な変化は失点数の減少だ。それまでリーグ16試合で27失点を喫していたにもかかわらず、シメオネの就任後は6試合連続で無失点。7試合目のヨーロッパリーグのラツィオ戦では初失点を喫したものの、最終的には3-1と逆転勝ちしている。8試合を終えてまだ無敗なのだ。

前線のFWまでもが高い守備意識を持ってプレスに参加。

 これだけ極端に失点が減った要因は、選手全員、特に攻撃陣の守備意識の向上にある。例えばFWのファルカオは、それまでゼロだった警告を4試合連続で受けるほどチェックの激しさが増し、ヴォルフスブルクで問題児とされたジエゴも怪我で離脱するまでは、トップ下で自由に動くのは攻撃時のみで、守備時は速やかに右サイドに戻ってプレスに参加するようになっていた。本職ではない右サイドバックでの起用が続くフアンフランも、慣れない守備を必死の形相でこなしている。

 こうした意識の変化により、それまで16試合で計261回(1試合平均16.3回)だったファウル数はシメオネ就任後の6試合で128回(1試合平均21.3回)に増加。1試合平均3.25枚だった被警告数も平均4枚に増えた。一方で、対戦相手の枠内シュート数は1試合平均2本に抑えることに成功している。

【次ページ】 DFゴディンは「以前はなかった戦術的な規律がある」。

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