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早稲田大学漕艇部/ボート
「春の風物詩・早慶レガッタに挑む」
text by
芦部聡Satoshi Ashibe
photograph bySatoshi Ashibe
posted2010/04/13 06:00
「絶対勝ちます」と意気軒昂。「負けたらOBに怒られます」
早稲田の名物食堂のオヤジさんがつくる寮の食事。
荒川をさかのぼって戸田漕艇場に帰ると、ボートを丁寧に洗ったのち、ようやく昼食の時間に。だが、ボリュームは体育会の学生とは思えないほど少ない。朝食もロクに食べていないのに、これだけで足りるのだろうか。
「練習で疲れたあとは、そばとかうどんみたいな、あっさりとしたものがいいんだってさ」と合宿所での食事をつくる金刺正巳さんは言う。金刺さんはかつて早稲田大学の近くで「フクちゃん」というとんかつ屋さんを営んでいたが、'04年からは漕艇部の寮長を務めている。
「30年以上店をやってたんだけど、還暦過ぎてこれからどうしようかって考えてたときに、寮で部員の面倒をみてくれないかって頼まれてね。寮長といっても、おれは料理をつくるだけ。後片付けは学生がやってくれるから気楽なもんだよ。でも、メニューを毎日考えないといけないのは、店よりも大変かな」
他の大学はマネージャーがつくったり、業者に頼んでいるところが多いらしいが、1902年創部の名門は力の入れ方が違う。
7升の米を食べ尽くす強靱な胃袋は体育会系ならでは。
「多いときは30人、40人分とつくったもんだけど、女の子たちはアパート住まいだし、いまは部員が少ないから、つくりがいがなくて寂しいねえ」と笑うが、それでも米は1食につき7升を炊く。全員がどんぶりメシを2杯、3杯と平らげるから、さすがは体育会だ。
「やっぱり早慶レガッタは他のレースとは違います。伝統の重みというか……独特の雰囲気があるんですよ。一度でいいから漕いでみたいという他大学の学生もいるぐらいです」
レースに懸ける意気込みを部員たちに聞いていると、金刺寮長が口を挟んだ。
「レガッタの前日は“レースに勝つ”ように、とんかつを揚げるよ。頑張れよ(笑)」