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ボクシング世界王者と
ジム会長が綴る人間交差点。
~内山高志と渡辺均の自伝を読む~ 

text by

赤坂英一

赤坂英一Eiichi Akasaka

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photograph bySports Graphic Number

posted2012/02/07 06:00

ボクシング世界王者とジム会長が綴る人間交差点。~内山高志と渡辺均の自伝を読む~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『心は折れない』 内山高志著 廣済堂出版 1300円+税 / 『ダメ男が世界チャンピオンをつくった』 渡辺均著 廣済堂出版 952円+税

ジムとチャンピオンの巡り合わせを別々の角度から読む。

 読み物としては、渡辺会長の半生記の部分が非常に面白い。

 高校時代にボクシングにハマリながらも自分が世界王者になれるとは到底思えず、最初から「ジムをつくってチャンピオンを育てよう!」と一念発起。国鉄に就職したのちにプロボクサーとして経験を積み、なおも国鉄で働きながら生まれ故郷の栃木県今市市(現日光市)にジムを設立する。

 ところが、集まってきた練習生に過度な期待をかけて次々に逃げられ、それならと東京への進出を決断。よくそんな二足の草鞋が履けたもので、このバイタリティーには感服させられる。五反田に現在のジムを開き、「国鉄入社14年目にして、私はようやく“地獄”から解放されました。ついに退職が叶った」と書いているのには笑ってしまった。並みの人間ならジムのほうを放り出しているところだろう。

 そうした異色の経歴を持つ渡辺会長と内山はいかにして出会ったのか。内山はアテネ五輪の夢破れた後、後楽園ホールで学生時代の仲間たちの試合を見て情熱が再燃、自らワタナベジムに電話をしたと書いている。しかし、渡辺会長によればもっと前、拓大時代からジムのマネージャーが「執拗に食らいつき」、「内山はその熱意に打たれ、私との縁をもつことになった」のだそうだ。それまではNHKで全日本選手権の試合を見ただけで、とくに興味を抱いていなかったという。このあたり、2冊合わせて読むと、ジムとチャンピオンの巡り合わせの面白さが別々の角度から見えてきて興味深い。

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