スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ペペ暴行が示したマドリーの問題点。
勝ち続ける必要があるモウリーニョ。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byUniphoto Press
posted2012/01/25 10:30
国王杯でピッチに倒れこむメッシ(中央)と手を踏んだぺぺ(右端)
昨季の4連戦、昨年8月のスーペルコパに続き、またもエル・クラシコで残念な事件が起きた。コパ・デル・レイ準々決勝第1レグ、レアル・マドリー対バルセロナ戦の68分。レアルのペペがピッチに座り込んだメッシにおもむろに近づき、彼の左手をスパイクで踏みつけたのだ。
足下を見てメッシの手の位置を確認した上、不自然に歩幅を狭めて手を踏みつける。誰が見ても確信犯としか思えないその行為は、ほどなく「ペペ、何て愚か者なんだ」とツイッターでコメントしたウェイン・ルーニーをはじめ、テレビの映像を通して世界中の選手、そしてフットボールファンに目撃されることになった。
ペペがこのような反スポーツ的行為を犯したのはこれが初めてのことではない。2009年4月に行われたヘタフェ戦の終盤、ペペはペナルティーエリア内でカスケロを後ろから倒した直後、ピッチに横たわるカスケロを2度にわたって蹴りとばし、さらに止めに入ったアルビンの顔を殴りつけた上、退場を命じた主審や副審に暴言を浴びせるという前代未聞の事件を起こしている。
結果として10試合の出場停止という厳罰を受けた彼は当時、「再びサッカーができるなら最善を尽くしたい」と反省の弁を述べた。しかし、復帰後も彼の態度が変わることはなかった。
レフェリーの目を盗んで行われ続けた、ペペの暴力行為。
相手選手やファンへの挑発行為が問題視されたのは一度や二度のことではない。
2010年10月のマラガ戦では、彼の挑発が原因でマラガのルケと掴み合いのケンカを起こしている。暴力行為も後を絶たず、昨年8月のスーぺルコパでは両チームの選手スタッフがもみ合いになる中、どさくさに紛れてビクトル・バルデスに蹴りを見舞った。同9月のレバンテ戦ではシャビ・トーレスのかかとを踏みつけた上、倒れた彼の頭にもう一発蹴りを入れる様子がカメラに捉えられている。
これらの行為は、みなレフェリーの目を盗んで行われており、ほとんどの場合処分を逃れている。今回も同様に、問題の行為を目撃していないムニス・フェルナンデス主審の報告書にはペペの暴行についての記載が存在しないため、規律委員会が特別に動かない限りはお咎めなしで終わる可能性が高いようだ。