プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ブーマーはなぜ選ばれなかったのか?
殿堂の意義を歪める「感情」と「偏見」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKazuhito Yamada
posted2012/01/24 10:30
1986年のオールスターで顔を揃えた大打者たち。ブーマー(中)、バース(右)の殿堂入りはならず、落合も2度の落選を経験した
はっきり言うが、ベテラン記者と呼ばれる人々の見識を疑う(みんながみんなとは思わないし、思いたくはないが……)。
プロ野球殿堂入りの投票である。
このコラムでも過去に中日・落合博満前監督が1票差で落選したときにその投票の基準に異を唱えたが、今年もやはり首を傾げざるを得ない結果となった。
今年はプレーヤー部門では、精密機械と称されたコントロールを武器に通算213勝をマークした広島・北別府学さんと、同じく広島で“炎のストッパー”と称された津田恒実さんの2人が選出された。
殿堂入りは数字と実績のみで選考されるべきか?
特に注目されたのは、1993年に脳腫瘍のために32歳の若さで亡くなった津田さんの選出だった。
亡くなるまでに津田さんは、286試合に登板、49勝41敗、90セーブという成績を残している。数字的には特に傑出したものではない。ただ、真っ直ぐ勝負にこだわり、数々の名勝負を生みだし、しかも全盛時に脳腫瘍に倒れて帰らぬ人となった選手としての印象は強烈だ。そのインパクトと、今年が候補者期限の最終年という事情もあって票を集めたようだ。
その一方で、殿堂入りは、あくまで実績を評するもので、そうしたイメージや主観で選ばれていいものなのか? 津田さんの選出に疑問を投げかける人も少なくなかった。
津田さんの殿堂入りは喜ばしいことだが……。
ただ、筆者は津田さんの殿堂入りに異を唱えるものではない。
津田さんがプロ野球選手として残した足跡は、数字とは別のところで評価されて然るべきものだと思う。その意味では、その足跡は選手として、プレーヤー部門で評価してこそ野球殿堂の価値をも高めることにもつながると考えるからだ。だから津田さんが、殿堂に名を連ねることには、何の違和もない。
問題は選ばれるべき選手が今年もまた、様々な感情や偏見で選出されないままに、その資格を失っていることにある。