プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ブーマーはなぜ選ばれなかったのか?
殿堂の意義を歪める「感情」と「偏見」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKazuhito Yamada
posted2012/01/24 10:30
1986年のオールスターで顔を揃えた大打者たち。ブーマー(中)、バース(右)の殿堂入りはならず、落合も2度の落選を経験した
レロン・リー、クロマティも記者の偏見にさらされた。
外国人選手だけでなく、落合前監督が2年連続1票差で落選したことも含めて、いまの記者投票では、そういう感情や偏見から正しい評価での投票がなされていない。そう言わざるを得ない。
その結果、殿堂入りしてもおかしくない成績を残している元ロッテのレロン・リー外野手や元巨人のウォーレン・クロマティ外野手などの外国人選手をスポイルしてきた。外国人選手で殿堂入りしているのは、ロシアから日本に亡命した扱いとなっていた元巨人のヴィクトル・スタルヒン(須田博)と与那嶺要(ハワイ移民の日系2世)のたったふたりだけ、という歪んだ現実を生んでしまっている。
現行の記者投票は“第三者の権威”たり得るのか?
記者投票は長いプロ野球とメディアの歴史の中で、第三者の権威ある表彰手段として定着してきた制度のはずだ。これは殿堂入りの投票だけではなく、MVPやベストナイン、ゴールデングラブ賞などの記者投票にもいえるはずである。
ただ、今年のオフの様々な“表彰”で、実は一番、納得できたのはフジテレビ「すぽると!」の「100分の1」という企画だった。
現役選手100人が互選で「最も守備のうまい選手」「もっともパワーのある選手」などの項目別にベスト1を選ぶ。オールスターの選手間投票と通じるところで、この投票では本当の1番を実感できたように思えたのだ。
いかに野球を観るプロとして、選手の力と実績を評価するか。投票する記者たちには、改めて、その1票の重さを感じとって欲しいものである。