プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ブーマーはなぜ選ばれなかったのか?
殿堂の意義を歪める「感情」と「偏見」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKazuhito Yamada
posted2012/01/24 10:30
1986年のオールスターで顔を揃えた大打者たち。ブーマー(中)、バース(右)の殿堂入りはならず、落合も2度の落選を経験した
文句なしの実績を残したブーマーがなぜ選ばれないのか。
プレーヤー部門の候補者は「プロ野球選手で、引退後5年を経過しその後15年間の者」という期限がある。そのため1993年に亡くなった津田さんは、今年がその候補としての最終年だったのだが、その他にも今年で候補としての資格が最後だったOBにはブーマー・ウェルズ、田尾安志、高橋慶彦、新井宏昌の各氏がいた。
とりわけ元阪急の主砲として活躍したブーマーは、殿堂入りには文句のない実績を残した選手と言えるはずなのだ。
日本でプレーした10年間、4915打席で1984年の三冠王をはじめ首位打者2回、打点王4回、最多安打4回とタイトルを獲得。通算打率も4000打数以上で歴代4位(右打者では1位!)の3割1分7厘を記録している。
なぜ、この打者が選ばれないのか? 殿堂入りの投票でつきまとう違和感は、実はこうした選手たちにあえて投票をしない「感情」と「偏見」を感じるからなのだ。
あるベテラン記者は「とても平等とは言えない」と分析。
ブーマーと同じように2度の三冠王を獲得した元阪神のランディ・バースも同じだった。バースは実働年数が6年で通算2550打席と実働年数、打席数が少ないことがネックだという人もいる。ただ、それならば津田さんも同じである。
しかし、結局は候補最終年となった2004年の202票が最高得票で、それを最後にプレーヤー部門での候補者資格は喪失した。
「とても平等とは言えず、記者の勉強不足と感情が大きく左右している」
過去に開票に立ち会ったことのあるベテラン記者はこう分析していた。
「基本的に投票パターンは前年の次点候補の得票が伸びるケースがほとんどで、その選手の実績を真剣に検討して、殿堂入りの資格があるかないかを考えて投票しているといえる人はあまりいないように思えます」
個人的な嫌悪感で外国人選手の選出を阻む記者も……。
それだけでもがっかりだが、加えて個人的な感情で資格云々以前に、最初から「アイツは絶対に殿堂入りさせない」と豪語している記者もいるというのだ。
「バースの場合は阪神在籍の最後は球団首脳との軋轢や病気の長男の取材で担当記者と犬猿の関係となった。退団を巡るいざこざもあって、当時担当していた番記者が多い関西の票がほとんど入らなかったために殿堂入りを果たせなかったのが実情です」
外国人選手と担当記者の間には、日本的な取材とプライバシーの問題で過去には様々な摩擦を生んだのも確かだった。
それを記者が引きずって、殿堂入りやその他の記者投票(現役選手の場合はMVPやベストナインもそういう対象になる)の場で意趣返しをしている――こんなことがあるとしたら、とんでもない話だが、実はこれが記者投票の現実の一面なのである。