日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
新年早々の移籍情報から検証する、
ザックジャパンの「向上心王」は誰?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2012/01/13 10:30
日本代表の新ユニフォームの発表会に、選手代表のひとりとして登場したハーフナー・マイク。ヴォルフスブルクなど複数のオファーの中でオランダのフィテッセを選んだ理由として「最初の一歩だし、いきなりトップリーグではなくて徐々に成長していきたかったから」としている
ブラジルワールドカップまであと2年半。アジア最終予選、ロンドン五輪本大会を迎える日本サッカー界にとって重要な2012年が幕を開けた。
今冬の移籍マーケットでは海外を目指す動きが加速している。偶然にも日本代表で激しいポジション争いを展開している3人の1トップ候補がそろって海外に目を向けている事態は興味深い。J1で日本人最多の17得点を挙げたハーフナー・マイクはオランダのフィテッセに移籍が決定し、新年早々にチーム合流を果たしている。1トップ候補としては唯一、ザックジャパンに1年間継続して招集された李忠成はイングランド2部、サウサンプトンと移籍交渉中。11月の2連戦(対タジキスタン、北朝鮮)で代表に復帰した前田遼一もイングランド2部、ウェストハムに練習参加しているというニュースまで飛び込んできた。
また、彼らFW勢以外にも駒野友一のベルギーリーグ移籍が取り沙汰されている。阿部勇樹の国内復帰が報じられ、槙野智章の浦和へのレンタル移籍が決まったものの、ザックジャパンの海外組が増加傾向にあることは揺るぎのない事実だ。
尋常の向上心では満足しない、ザッケローニの課したハードル。
日本人プレーヤーが次から次へと海外移籍に踏み切る理由として、「向上心」が挙げられる。
「私は選手たちを3つの要素で評価している。それは才能、集団行動力、そして向上心だ」
昨年1月、アジアカップで優勝を決めた翌日、アルベルト・ザッケローニは選手の評価基準を聞かれ、こうキッパリと明言した。向上心なき者は、選考の対象とされないという方針がチーム内外で発信されたのだ。多かれ少なかれ、向上心のない選手などいない。つまりこれはザッケローニに伝わるほどの向上心でなければならないほどのレベルを指している。
たとえばマイクは初招集の際、相手の死角に入るようなボールの受け方を指揮官からマンツーマンで指導され、それをヴァンフォーレ甲府に戻っても会得しようとしていた。Jリーグの試合でその動きが出てくるようになり、ザッケローニは10月のタジキスタン戦でもマイクを呼んで先発で起用している。もちろん戦術的な意味合いはあるものの、強い「向上心」をマイクに見たからこそ先発のチャンスを与えたのである。
ボールの受け方に関してはマイクだけでなく、李や前田も相当に意識しているように見える。李は周りとのコンビネーションに磨きをかけてきたし、前田は11月のタジキスタン戦で安易にサイドに流れず、縦パスを受けることにこだわっていた。それぞれの向上心とライバル心が互いの切磋琢磨を生み出し、相乗効果を生み出している。Jで結果を残したマイク、李、前田のいずれもが自己のさらなるレベルアップを求めて海外に目を向けたのは、自然の流れなのかもしれない。