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レンジャーズを支えたチームリーダー、
マイケル・ヤングの“滅私奉公”。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2011/11/01 10:30

レンジャーズを支えたチームリーダー、マイケル・ヤングの“滅私奉公”。<Number Web> photograph by Getty Images

レギュラーシーズンは159試合に内野手、指名打者で出場し213安打、107打点、打率.338とリーダーとしてチームを牽引した。ワールドシリーズでも一塁手、指名打者として全試合に出場。27打数7安打3得点の活躍で、世界一まで後一歩のところまで迫った

謙虚なリーダーの背景にはコンバートの歴史あり。

 自分の定位置すらない、監督の思惑通りに起用できる“使い勝手のいいチームリーダー”。未だかつてこんなチームリーダーは見たことがない。

 これは、ヤングがレンジャーズで歩んできた経歴が影響していると思われる。

 ブルージェイズからの移籍当初のポジションはショートだった。それが2001年にアレックス・ロドリゲスが加入するとセカンドにコンバートされ、2004年にロドリゲスがヤンキースに移籍すると再びショートに復帰。そして2009年に若手のエルビス・アンドラスがメジャー昇格すると、今度はサードにコンバートされた。

 つまり彼の野球人生は、スター選手である一方で常にチームの望むままに従ってきたのだ。

 だがそんなヤングも、今シーズンのキャンプ開始前に自分の我を出したことがあった。ブラディミール・ゲレロに代わる主軸打者を獲得するため、チームがエイドリアン・ベルトレと契約したことで、内野にヤングの居場所がなくなってしまい、遂に本人の口からトレードを直訴する発言が飛び出したのだ。

 もちろん、キャンプ初日はヤングの処遇がどうなるかで大騒動となった。だが首脳陣と話し合いを行なったヤングは、結局いつもの彼に戻っていた。

「キャンプ初日は自分にとって最高の日だった。すべてのゴタゴタを過去のものとして野球に集中することができた」

今シーズン何が求められているかを冷静に分析し、黙々とプレー。

 ヤングは常に“現在(いま)”だけを考えようとしている。

 これまで自分が築き上げた実績も栄光もすべて“過去”のものとして、つまらない私情を一切挟もうとしない。そしてレンジャーズの一員として、今シーズン何が求められるのかを冷静に分析した結果、控え内野手的な起用法に一切の不満を漏らすことなく黙々とプレーを続けてきたのだ。

 また彼は、チームリーダーとしてクラブハウスにシーズンを通して最高の調和を醸し出していた。そこには人種、出身国に関係なく皆が居心地のいい空間が形成されていた。

【次ページ】 シーズン途中加入の選手がすぐチームへ馴染める理由。

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