MLB東奔西走BACK NUMBER
レンジャーズを支えたチームリーダー、
マイケル・ヤングの“滅私奉公”。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2011/11/01 10:30
レギュラーシーズンは159試合に内野手、指名打者で出場し213安打、107打点、打率.338とリーダーとしてチームを牽引した。ワールドシリーズでも一塁手、指名打者として全試合に出場。27打数7安打3得点の活躍で、世界一まで後一歩のところまで迫った
メジャーリーグの“チームリーダー”を想像するとしたなら、どんな人物像を思い浮かべるだろうか。
一般的には長年メジャーで実績を残すとともに、球界およびチーム内に確固たる地位を築き上げ、ある程度我も強く、首脳陣もその起用法に気を遣う存在──というのが当たり障りのないところだろう。
だが今シーズン接する機会が多かった、さるチームのリーダーはこんな一般像とはまったく対極にいる選手だった。2年連続ワールドシリーズ出場を果たしたレンジャーズのマイケル・ヤング。
彼のような慎ましやかな“滅私奉公的リーダー”はお目にかかったことはなかったし、今シーズンのレンジャーズの躍進を支えたのも間違いなくヤングだった。
2000年に有望マイナー選手としてブルージェイズからトレードされ、その年にメジャー初昇格。その後はレンジャーズ一筋、今年で12年目と誰もが認める“ミスター・レンジャーズ”だ。だが今シーズンのヤングに、チームリーダーとしての我の強さは微塵も感じることはなかった。
指名打者であり、控え内野手という、チームに便利なポジション。
今シーズンの起用法をみれば一目瞭然だ。
MLBの公式サイトでは今シーズン、ヤングの登録は「指名打者」になっている。ちなみに今シーズン、彼の公式戦出場数はチーム最多の159試合。しかし、実際指名打者での出場数はたった69試合しかない。別表にまとめた今シーズンの出場状況をご覧頂きたい。何と残りの90試合は、内野の全ポジションで出場しているのだ。
先発ポジション | 試合数 |
---|---|
指名打者 | 69 |
一塁 | 36 |
二塁 | 14 |
遊撃 | 1 |
三塁 | 39 |
計 | 159 |
理由は至って簡単。正選手の負傷や休養に伴う代理出場だ。
つまり指名打者のヤングが控え内野手の役目まで担っていたのだ。