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30日の東京ダービーで何かが起こる!!
J2のFC東京が首位で迎える正念場。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2011/10/26 10:31
羽生直剛をトップ下に置く4-2-3-1で今季途中から快走を続けているFC東京。チームは、前身の東京ガス時代から東京の地元チームとしての意識が高く、東京ヴェルディとのダービーマッチは、サポーターも異常な盛り上がりを見せる
「個人だけで勝負してもうまくいかない」(羽生)
羽生が“あのとき”を振り返ってくれた。
「(先発で)出られないもどかしさがあったので個人的なことも理由にありますが、なかなか勝てないというチーム状況もあって……。やはり個人だけで勝負をしようとしてもうまくいかないし、ボールが動いている間に次のポジションを取るとか、みんなの動きが組み合わさっていかないとゴールは生まれない。頑張って走らなきゃいけないし、その誰かがフルに走って空けたスペースに違う誰かが入っていくとか、そういうことも大事じゃないかって伝えたいという思いが僕のなかにはあった。そういうのが少しでもチームに伝わったような気がしたのもあって、いろんな感情で混ざってあんなふうになったのかもしれません」
J2の舞台はピッチ環境がJ1ほど整備されているわけでない。テクニックよりもフィジカル勝負に拠る部分も大きい。今季のFC東京はJ2で勝ち抜くために、ターゲットマンにボールを集めて「力技」で押し切るスタイルを採用しようとした。しかし結果が出ないことも手伝って、「個」の力ばかりに頼るようになってしまった。
“急がば回れ”への方針転換に選手も即座に呼応した。
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羽生が決勝点を挙げた富山戦の次節、草津戦に敗れたタイミングでチームは大きく舵を切ることになる。平山の代わりにターゲット役をこなしていた高松大樹までもがケガを負い、指揮官の大熊清はついに決断を下す。
「正直、全チームとあたる一巡目はある程度厳しい戦いになるだろうとは予想していた。J2を経験している選手は少ないし、相手も引き分けでOKというぐらいの精神状態で来ますからね。逆にこっちは勝って当然と見られている立場。だけど、ケガ人が次々に出てしまって(高松)大樹まで離れたことで当初の方針を変えていかざるを得なかった。中盤を多くして、スピーディーにうまく回しながらサイドやスペースを突く“急がば回れ”でやろうということにしたわけです」
この方針転換に選手たちも即座に呼応する。
羽生が語る。
「ターゲットの選手がいなくなったことで地上戦に持っていくしかないと誰もが思ったときに、そうやっていくという方針になった。みんな危機感を強く持っていたし、選手間同士で凄く話し合うようになりました。どうやったら勝てるか、連係面で細かく意見をぶつけ合うようになった。監督も『選手同士でミーティングをしなさい』と言ってくれていましたし、話し合ってやるべきことを深めることによってそこから結果につながっていきましたね」
危機感が結束を強くする。方針が固まれば、もはや迷いなどなかった。