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ベッテルの失速が唯一の見せ場!?
F1開幕戦は起伏なき展開に。
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byHiroshi Kaneko
posted2010/03/16 13:00
フェラーリ移籍後初のレースでアロンソが勝利を拾い、独走していたベッテルが勝利を逃して4位に終わったこの開幕戦の内容をどう評価するか、人それぞれの見方によって大きく違って来るだろう。
マシンと実力の差がハッキリ出ていて「レースが分かりやすかった」という声もあった。
たしかにタイヤと給油タイミングの戦略が複雑に絡み合った昨年までのレースは1回ピットストップあり2回ストップありで、レースの途中は見かけ上の順位と実質的な順位が異なっており、すべてのマシンが予定のピットストップを終えないと全体の順位が分からないもどかしさがあった。
そこへ行くとバーレーンの開幕戦は例外を除き1回のタイヤ交換でピット作業が終わったので、ピットストップの“山”の数周を過ぎればそれぞれのドライバーが本来の順位に戻って、展開が実に分かりやすかった。もちろんピットインのタイミングやピット作業の巧拙でポジションが変わることもあり──今回はハミルトンがロズベルグを、バトンがウエーバーをピットストップで逆転した──ピットワークの面白さも残っている。
ベッテルの失速が「退屈・中ダレ」のレースを救った。
しかし実際にはピットストップが終わるとそこで勝負の決着がついてしまい、後はチェッカーフラッグが振られるのを待つだけの淡々とした“周回数消化パレード”を見せ付けられかねない可能性も濃かった。
予選結果を見ても分かるように、Q3に残れるのはトップ4チームの8人+中堅上位の2人。スタートの1コーナーの混乱が収束し、序盤数周を過ぎればポジションが固まり、ピットストップの後は長い均衡状態が続く。全49周の今回のバーレーンのレースでいえば20周目から30周目がその“エアポケット”状態にあたり、いま筆者のパソコンに打った取材メモを見ると「退屈・中ダレ」とある。
そのアクビ大会を救った(!?)のは、いうまでもなくベッテルに降りかかったメカニカルトラブル。残り20周となったあたりからペースが上がらず、やがてフェラーリ勢とハミルトンに先行されてしまう。ベッテル車はあきらかに排気音に変調をきたしていた。レース終了直後、ベッテルは「排気管の故障」としていたが、その後スパークプラグの故障が直接の原因と判明。不整爆発が異常燃焼につながってそれが排気管のトラブルを引き起こしたらしい。
それはともあれ、このレースはベッテルの独走と失速に最大の見せ場があったわけで、プラグのトラブルがなければ内容的にはまったくつまらないレースになっていた可能性も高いといえる。