野球善哉BACK NUMBER
今季の京セラドームに異変アリ!?
新型人工芝に惑う各球団の守備陣。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/09/14 12:20
今季からアストロ社製の最新型の人工芝を採用した京セラドーム。“ロングパイル”という毛足の長い芝の形状が特徴で、似たような人工芝はメーカーこそ異なるが東京ドーム、ヤフードームなど多くの球場で使用されているのだが……
「難しいというか、どうしようもない」という跳ね方。
悲劇の予兆はある。
9月2日のオリックス-日ハム戦では、7回裏、2死一塁からオリックスの3番・後藤光尊が左翼安打を放つと、今度は高いバウンドではなく不規則にはね、日ハムの左翼手・中田翔はボールの軌道を予測できずに、後逸した。
一走・大引啓次が長駆ホームイン。これが決勝点となったのである。
映像だけを見れば、中田の緩慢プレーにも見えなくはない。翌日の紙面には中田のミスだという報道もあった。しかし、先にも書いたように、天谷のミスやあたふたと抑え込むようにしてボールをグラブにおさめていたオリックスナインの姿を回想すると、一概にも、中田の守備能力だけに原因を求めるべきではないと思ったのだ。
守備能力が低いからか、球場に慣れていないからか。中田本人に直接尋ねてみると、怪訝な表情で彼はこう応えた。
「慣れたら捕れるんですかね? 難しいというか、どうしようもないんちゃうかと思います。ここの芝はボールの回転によっても、全然違う跳ね方をするんですよ。慣れていても、難しいと思います」
では、ホームであるオリックスの選手はどうしているのか?
その翌日、中田はまた別の捕球ミスをしている。
2回裏、イ・スンヨプが放った打球が遊撃後方にフラフラっとあがる。中田は必死に追いかけたが、ボールが落下する直前に足を止めた。届かないと判断したのだ。すると、ボールは大きく跳ねて、中田の想像外の方向にボールが転がった。イ・スンヨプは二塁を陥れていた。
再び尋ねてみると、
「スンさんの打球にしても、大きく跳ねるだけなら分かるんすよ。でも、あの打球は、そのままの打球方向に大きく跳ねたんじゃなくて、斜めに高く跳ねたんですよ」
中田はやたらと首をかしげていた。
実際問題として、京セラドームを自らの庭とするオリックスの選手はどう対処しているのだろうか。3年連続ゴールデングラブ賞の坂口智隆に聞いた。
「判断が難しいかなと思います。前に行くのか、後ろに行くのか。それは、もう、ホームグラウンドにしている僕らでも分からない時があります。ただ、間に合わないのに前に突っ込んでも仕方がないし、無理に行っても仕方ないんで、試合の状況によって、判断を変えていますね、僕は」