野球善哉BACK NUMBER
関西で流行りの“攻撃型捕手”とは?
夏の甲子園で旋風を巻き起こすか。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/07/26 12:20
高校入学当初には、守備を重視する捕手としての練習に馴染めず退部も考えていたという龍谷大平安の高橋大樹(2年)。甲子園出場決定直後には「辞めんで良かった……」とコメント
肝心な試合では捕手から外されてしまう高橋だが……。
銀仁朗が二塁送球タイムにおいて、ほとんど2秒を切っていたのに対し、高橋が2秒を切ることはない。2.2秒さえ切れないことが多い。プロを目指す捕手としては物足りない数字だ。
さらに、捕手として銀仁朗に及ばないことを象徴しているのが府大会での起用のされ方で、高橋は勝負所の準決勝と決勝戦で捕手を外されて右翼を守らされていたのだ。
「相手に高橋の隙を突かれるのは分かっていました。だから、準決勝と決勝は高橋を外野に回そうというのは、大会前から考えていたことなんです」と原田監督は言う。
当の本人は、「遠くに飛ばすのが気持ちいいので、ホームランを打ちたいと思っています。好きな打者は巨人の長野、右方向に長打が打てるので、憧れています」と「打」を語る一方、キャッチャーとしては「自分、頭が悪いので、もうちょっと勉強しないといけないんですが……」と、あまり重要なこととは思っていないようだ。
龍谷大平安は25日の決勝戦で立命館宇治を破り、2年ぶりの甲子園出場を決めた。高橋は準決勝の福知山成美戦で2本塁打を放ち、決勝戦でも3安打2打点とチームの優勝に貢献した。原田監督は「福知山成美戦でホームランを打った次の打席で、セカンドの頭の方へ打ったのは、ちょっとした成長を感じましたね。今日の決勝でもホームランを狙わずに、右方向を意識したバッティングを見せた。すぐにホームランを狙ってしまう選手でしたけど、修正能力がついている」と高橋の打への評価はさらに上がり続けている。
「銀仁朗2世」という称号には違和感も残るが、その打棒は甲子園でも観衆を沸かせてくれるに違いない。
1年生の頃から監督が才能を認めていた東大阪大柏原・石川慎吾。
東大阪大柏原の捕手・石川慎吾も、近畿を代表する捕手として注目を浴びている。高校通算本塁打は55本で、スラッガーの道を間違いなく歩んでいる選手の一人だ。
以前、センバツ優勝経験もある東大阪大柏原・田中秀昌監督が、こんな話をしていたことがある。
「僕が上宮高でコーチをしていた時の、元木(元巨人)がそうだったんですけど、右方向に大きい打球を打てるかどうかがバッターとして、良いかどうかの指標なんです。特にスラッガーは、ね。石川は右に大きいのが打てる選手なんです。今は下級生ですが、石川という名前を、覚えておいてください」
1年の時を経て、石川は大阪を代表するスラッガーに成長した。