セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
ベテランDFの一撃でジ・エンド。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byGetty Images/AFLO
posted2008/03/03 00:00
2月27日、リーグ優勝をかけたインテルvs.ローマの直接対決は1−1の引き分け。逆転昇格を虎視眈々と狙っていた挑戦者が、先制ゴールを決めたものの結果的に勝てなかったのは、「個の力」、すなわち個々の選手が己の特徴を十分に出せなかったことが要因だった。
確かにローマは、スピードを武器に積極的に攻めた。しかし、おそらくこの試合は負けられないというプレッシャーもあったのだろう、先制した後は攻撃を急ぎ過ぎ、選手たちが役割以上のプレーをしようとしたため「らしさ」に欠けた。
視野を広く保ちながら、選手たちの連動で相手を突破するのがスパレッティ流のサッカーだが、スルーパスを得意とするMFマンシーニが不在、FWタッディが病みあがりの状態では、王者を上回ることはそもそも難しかった。さらにはMFピサーロ、MFデ・ロッシが不発。追加点を挙げるのに四苦八苦していた。
土壇場で引き分けに持ち込んだインテルも、理想どおりのゲームを展開をしたとはいえない。個人技に長けたFWイブラヒモビッチ、クルツの欠場で、ゴール前でローマ守備を崩せず苦戦した。しかし、粘り強さは随所に見えた。
とりわけ守備陣のポジショニングの良さは光った。後半から投入された2人の若手FWに戸惑いが見られたが、彼ら頼りない攻撃陣に変わってディフェンダーが奮闘し、粘りに粘った末、絶好のチャンスを作りだした。最後はDFサネッティの勝負魂が、土壇場での同点ゴールを生んだのである。
強烈なカリスマ性は感じられないサネッティだが、窮地に立たされた時にどのように戦うべきか判断する能力をもっている。後半43分、先制ゴールを決めたローマのFWトッティにも引けをとらない閃光のような1撃で、リーグ連覇を確実なものにした。
150回目の因縁対決となった大一番。首位のインテルが2位のローマに9ポイント差をつけ、今季のセリエAは「ジ・エンド」となった。