Column from GermanyBACK NUMBER
ヒルデブラントの将来に期待したい理由
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byAFLO
posted2005/01/25 00:00
VfBシュツットガルトのGKティモ・ヒルデブラントは、私好みのイケメンである。若くて美形、プレーにムラがなく、性格も二重丸をつけられるから、“その気”がなくても、すごく応援したくなるタイプなのだ。
まだ25歳。GKとしてはひよっ子である。チーム躍進の大黒柱の1人。さぁ、後半戦も…と期待していたところ、「来季、チームとは契約を更改しない」ことになった。今季限りで10年間世話になったチームを退団、新たなチーム探しに入る。
契約交渉は当初、順調だった。だが土壇場で彼の代理人が、どうでもいいような部分でクラブに難癖を付けてきた。交渉時にはよくある手だ。「卑劣なやり方だった」とクラブの会長は激怒した。会長は元IBMドイツ社の副社長だ。相手の計算は読み通せたはずだったのに、と思う。
英国からは「マンUが交渉を開始した」だとか、「文句ばかりのレーマンを解雇、アーセナルの中軸に育てる」といった情報が飛び込んでいる。いずれも推測の域を出ないが、ビッグクラブからお誘いがあったと噂されるだけでも偉い!
オリバー・カーンがあれほど別格の存在になれたのは、重要な試合で数多くの決定的ピンチを救ってきたからである。国内リーグ、欧州の舞台、そして決定打が02年W杯だった。これでカーンの評価は絶対的になった。
一方のティモは昨季のチャンピオンズリーグくらい。もちろん国内リーグは相応のパフォーマンスを示しているが、あと一皮が剥けないところ。彼の素質から判断しても惜しいことである。
代表入りしたボルフスブルクのイエンチュはいかんせん国際経験が乏しい。バイエルンでカーンの控えを務める20歳のミヒャエル・レンジングは「10年に一度の逸材」ともてはやされるが、実戦経験がなければ話にならない。レーマンはキャリアの終わりにある。
というわけでティモは今後のドイツGK界を背負って立つ運命にある。強烈なライバルが国内にいないのだったら、海外で活路を見出すのは当然だ。
カーンが、カールスルーエSCという中堅チームに見切りをつけてバイエルンに移籍したのは25歳のときだった。その後のカーンの大変身はご存知の通り。
偉大な先達と同じ道を歩むことができれば、ティモもドイツ代表も新次元に突入することだろう。もっとも、DFラームに続き、ティモまで失うシュツットガルトには苦難の時代が待ち構えているが。