ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER
第9回:国際親善試合ハンガリー戦レポート「アウェーでは通用しない“Jモード”」
text by
木ノ原久美Kumi Kinohara
photograph byAFLO
posted2004/04/26 00:00
0−2ビハインドから追いついてこのまま引分けに終わるかと思ったロスタイム、日本はDF茶野のプレーから与えたPKをフスティに決められて、2−3でハンガリーに敗れた。
試合後のジーコ監督は、「両チームの好ゲームが台無しになった」とクロアチア人主審のPK判定を非難し、茶野も「触っただけ」と問題の場面を釈明した。だが、アウェーの試合で、ペナルティボックスの中で後から肘を使って押すような格好になれば、ファウルと取られても不思議はない。試合の残り時間を考えれば不用意なプレーだった。
それに問題は、そのひとつ前の場面だろう。MFドゥヴェリから左サイドのフスティへのボールを、DF坪井が目測を誤って通してしまい、そこからフスティ→トールゲラとつながれて、茶野のファウルに至った。この場面だけでなく、チーム全体で試合中は無防備や不用意なプレーが見られ、選手の意識が“アウェーでの国際試合”に切り替わっていないことを感じさせた。
2-0のリードを許すことになった2回のFKの場面でも、いわゆる2列目からゴール前へ入ってきた選手へのケアが全くできていなかったために、簡単に合わされてしまった。また、パスの出し処を捜す間ボールを持っていて、詰め寄る相手に気づかずにカットされる場面もあった。その無防備さは、意識が “Jリーグモード”のままであることを示していたように思う。
今回、欧州組はリーグ戦の絡みで合流できず、国内組でもDF宮本ら負傷で遠征を見送った者もいた。そこに茶野やDF田中(磐田)という新メンバーが招集されたが、チームが一緒に練習できたのは試合前の1日のみで、国内組とはいっても欧州組を交えたときのような調整不足があった。
そういう時ほど、「チームとしてこうする」という形があればそれを拠りどころにできるのだが…。田中は「組織的な守備というか、バランスが悪い」と話し、チームとしての形の無さを指摘した。
対戦したハンガリーも、週末のリーグ戦と28日のブラジル戦を控えて、新しい選手が試されるなどフルメンバーというわけではなかった。だが、凸凹でボールがまともに走らない芝をものともせず、好守の切り替えが速く、勢いがあり、華麗ではないが強さのあるプレーを見せた。たびたびゴール前まで迫りながらも、細かいパスをつないでDFの裏を突いて攻めることに固執してくれたおかげで、前半は0-0で終わった。
この試合の日本代表に、ポジティブな面もある。0-2のビハインドから追いついたことだ。後半29分の玉田と同31分の久保の得点は、いずれも相手GKのミスが絡んだものとはいえ、チームが練習してきた外からの展開によるプレーだった。
「みんなグランドに慣れていない感じだったけど、よく追いついた。だからこそ、最低でもドローにしたかった」と、この日キャプテンを任されたMF藤田は言った。
次の試合は28日にプラハで行われるチェコ戦。相手はフルメンバーに近いチームになると予想されている。日本も欧州組が合流して別の顔のチームになる予定だが、こちらに少しでも“アウェー”に戸惑っているようなことがあれば、今度の相手にはあっという間に試合を決めてしまう力がある。
チームとして何をするのか。結局、そこに話は戻る。