野球クロスロードBACK NUMBER
首位ヤクルトを支える原動力、
館山昌平が負けない理由とは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/07/13 12:05
プロ入り後、右肘を故障し手術をしている館山昌平。いまでこそ多彩な変化球と精密なコントロールを売りにしているが、怪我の前は最速153キロの速球とシュート、スライダーで押すピッチングスタイルだった
不調でもひとつは出せる「キレのあるボール」。
指揮官の小川淳司は、「今日はダルそうに見えましたよね。この先どうなるかと思いました」と心配していたものの、彼の持ち味が出ている、とも判断していた。だからこそ完投させた。
「館山のいいところは、調子が悪いなかでもキレのいいボールをうまく使っているところ。それがあるからしっかりと粘ることができ、抑えられるんだと思いますよ」
調子が悪くともキレのいいボールをうまく使う――。この日の館山にとって、その球種とはフォークだった。
2回まではスライダーなど横の変化球を主体としていたが、相手打線に捉えられていると判断した3回からメインをフォークに切り替える。この回、1点を許し、なおも1死一、三塁のピンチで4番のラミレスを迎えた際には、5球全てフォークで三振に打ち取った。109球中フォークは38球。うち、3回以降に投じた球数は33球と徹底していた。
「右バッターへのフォークが有効だということが分かっていたので、うまく修正できました。コースもきわどいところに投げることができたので、うまく相手にフォークを意識付けできたんだと思います」
フォークの効力についてそう分析する館山だが、実は、序盤の投球について「それほど悪くはない」と好感触を抱いていた。
認識のズレを埋める、バッテリーの信頼関係。
その館山の甘い認識に危険を感じ、効果的な対応策をすぐに助言したのが捕手の相川亮二だった。
「館山とも話をしたんですが、最初は腕が振れていなかったんですね。それが3回から腕がしっかりと振れるようになってきたので、ひとつでもキレのあるボールを有効に使いたいということでフォークを選びました」
相川は、2回までに投じた5球のフォークのキレと3回に修正した館山の腕の振りから配球を変え、巨人打線を手玉に取った。