野球クロスロードBACK NUMBER
首位ヤクルトを支える原動力、
館山昌平が負けない理由とは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/07/13 12:05
プロ入り後、右肘を故障し手術をしている館山昌平。いまでこそ多彩な変化球と精密なコントロールを売りにしているが、怪我の前は最速153キロの速球とシュート、スライダーで押すピッチングスタイルだった
相手を力でねじ伏せられる球威やスピードはない。確実に空振りを奪える伝家の宝刀を持っているわけでもない。
それでも、今季の館山昌平は負けない。
開幕から抜群の安定感を見せ、7月12日現在で7勝1敗。勝率8割7分5厘、防御率1.40はリーグトップと、その活躍は首位をひた走るヤクルトの原動力と言っていい。
抜群の制球力と、多彩な球種で長打を防ぐ。
館山が負けない理由はいくつか挙げられる。
まず、正確無比とも形容できる制球力。与四球の数は、規定投球回数に達している投手では最も少ない12。1試合あたり1つ以下と驚異的な数字を叩き出している。
そして、多彩な変化球。スライダーにカーブ、カットボール、シュート、シンカー、フォークなど、10以上もの球種を巧みに操る。
「ゴロでアウトにするのが自分の持ち味」と館山自身が語るように、精密な制球力に豊富な球種が加われば、低めへボールを集めることができ、必然的に長打を許すケースも減ってくる、というわけだ。
チームも勝利し、投球内容も及第点だが納得しない館山。
今季の館山が負けない最大の要因は、その持ち味をコンディションが悪いときでも最大限に引き出すことができることだ。
それを如実に物語っていたゲームが、7月6日の巨人戦だった。
9安打されながらも2失点完投。球数も109と、館山本来の打たせて取る投球で相手打線を翻弄した。
内容は及第点。しかし、ゲーム後の館山は、チームに勝利をもたらすことができて安堵の表情こそ浮かべていたが、忸怩たる思いをぶつけるかのように、自身の投球をひと言でこうまとめた。
「最後までエンジンがかかりませんでした」
この日のコンディションは決してよくはなかったというのだ。