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失速したシャルケは優勝できるか。  

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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posted2007/03/15 00:00

失速したシャルケは優勝できるか。 <Number Web> photograph by AFLO

 チームは13試合連続負けなしで首位を快走、20歳の第3GKが突如レギュラーに抜擢され大活躍、悪名高い老GMがようやく追放され、39歳の若い監督は2年間の契約延長を決めた──。日本では無名だがドイツでは超人気のシャルケ04はこの半年、いいことずくめで物事が進んできた。

 ゲルゼンキルヘンは週末を除けば退屈極まりない街だ。サッカー以外に何もないからである。逆に言えばサッカーのためだったら何でもする。それが総延長5kmに及ぶビールのパイプラインを敷設した近代的スタジアム、情けないほど小さな中央駅前広場で繰り広げられる大合唱(右翼の街宣車も顔負けのスピーカー騒音付き)、トラム沿線の住宅という住宅の窓に掲揚される神聖なるシャルケの小旗の洪水である。だがこれなど穏便なものである。本当のシャルケの過激さは、八百長事件を起こした主力選手を裁判所が尋問、税務署から不透明な会計を指摘された金庫番が入水自殺、旧スタジアムの客席から“忘れ物”(ちぎれた指)が見つかったりと、数え上げたら切りがない。

 そのスタジアムから車を走らせること10分、ブーアー地区に辿り着く。恐ろしいほど寂しいゲルゼンキルヘンで、ブーアーは小規模ながらも繁華街である。GKマヌエル・ノイアーはここで生まれ育った。よそ者が離合集散するサッカー界にあって、「スタジアムから10分」は地元ファンから熱烈に愛される条件となる。

 そのノイアーがポジションを確保できたのは2つの偶然が重なったからだった。正GKロストがスロムカ監督と不仲になったばかりか、司令塔のリンコンと殴り合いの喧嘩をしてしまい、ハンブルクへ放出されてしまったのだ。さらに第2GKがケガで長期戦線離脱していたことでノイアーに出番が回ってきた。若者はチャンスを生かした。チームは難敵を次々と破り、49年ぶりのリーグ優勝が視界に入ってきた。

 と、ここまではすべてが上手くいっていた。2月下旬、順調だったチームが突如失速する。原因の1つはリンコンである。この選手の名前は、奴隷解放を行なったアメリカの元大統領と同じ綴りだが、こちらのリンコンも人種差別に相当敏感だったらしい。23節のレバークーゼン戦ロスタイム、0-1で敗色濃厚なリンコンを相手選手が「お前ってブラジル人になりたいんだろう?」と挑発した。ブラジル人らしくないプレーをすると受け取ったリンコンは相手の顔面を殴打。もちろん結果は一発退場。24節の大事なハンブルク戦に出られなくなった。

 リンコンがいるといないとでは、シャルケの展開は大きく違ってくる。コビアシビリではセンターでゲームを作れないし、エルンストでは守備的すぎる。結局、HSV戦はホームで0-2の惨敗。これで過去3試合は▲、●、●となり、2位以下を大きく引き離す予定が反対に勝点3まで追いつかれてしまった。26節は3位のシュツットガルト、27節は4位のバイエルンが相手だ。ここで勝点を失えば、'01年と'05年シーズンの再現が待っている。いずれもあと一歩のところで優勝を逃した。歴史は繰り返されるのだろうか

 ドイツ語でSchalkは「いたずらっ子」の意味。複数形はシャルケと発音が似ている「シェルケ」になる。またGKノイアーの意味は「新人さん」だ。私がロストだったら、こう叫ぶはずだ。「いたずらっ子と新人さんでリーグ優勝できるほどサッカーは甘くない。どうやったら勝てるのか復習しろ。オレはちゃんと復讐したからな」。こんな駄洒落を飛ばしたところで、浮き足立った地元ではウケナイと思うけど。

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